【1月1日 AFP】現生人類の起源については、150年以上前から激しい議論が行われてきた。現在の定説では、現生人類はアフリカから移住し、欧州で暮らしていたより原始的なネアンデルタール人を圧倒した、あるいは彼らと交雑したとされている。しかし、現生人類は約2万8000年前に謎の絶滅を遂げたネアンデルタール人から進化したという理論を支持する研究が発表される。

 2日発行の米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)速報版に掲載される研究によれば、大規模な気候変動の痕跡が後者の説を支持するという。

 カナダ・ケベック(Quebec)州にあるラバル大学(Laval University)の人類学部教授ユージン・モリン(Eugene Morin)氏によれば、現生人類が道具を発明し洞窟画を描かき始めた時代の西ヨーロッパ地域は、長期間にわたり厳しい気候が続いており、他の地域から人類が移動してくるには適していなかった可能があるという。同教授によると、大規模な気候変動により狩猟対象の動物の種類や数が急激に減少した結果、ネアンデルタール人自身が進化した可能性が高いとしている。

 モリン氏は、フランスのサンセザール(Saint-Cesaire)の遺跡で発見された動物の骨を調べた結果、約4万年前から3万5000年前の間にネアンデルタール人が消費した食料に占めるトナカイの割合が30%から87%に増加していたことが分かったという。またハツカネズミやハタネズミなど小型ほ乳類の骨も同様に増えていた。これらのことから当時この地域を襲った比較的急激な気候変動により、それまで狩猟の対象だったバイソンや馬が減少したのだとモリン氏は推論する。

 さらに、トナカイの頭数が不安定だったため、生き抜くために獲物を巡る衝突が頻繁に発生し、この地域のネアンデルタール人の人口は急激に減少した。この結果ネアンデルタール人の遺伝的多様性も失われ、突然変異が定着しやすくなったと同教授は推測している。

 また、厳しい環境によって、狩猟採集民族だったネアンデルタール人は食糧を求めて遠くまで歩き回らなければならず、厳しい時期に自らを守るため社会的な交流を広げていった可能性もある。モリン氏は、このことによりクロマニヨン人に見られる遺伝的な特徴が広まり、より複雑な道具や洞窟画が作成されるようになった可能性もあるとしている。(c)AFP/ Mira Oberman