【12月4日 AFP】チンパンジーの子どもが大人のヒトより格段に優れた記憶力の持ち主であることが明らかになった。京都大学霊長類研究所(Primate Research Institute at Kyoto University)の松沢哲郎(Tetsuro Matsuzawa)所長率いる研究チームが、研究結果を4日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表した。

 松沢所長らは、あらかじめ数字の学習を受けた合計6頭のチンパンジーと、9人の大学生の記憶力を比較するかたちで実験を行った。実験に参加したチンパンジーは、母親3頭と、いずれも2000年に誕生したその子ども3頭。

 実験では、1から9までの数字をコンピューターの画面にランダムに表示させ、続けてこれらの数字を白い四角形で隠して画面に表示。被験者は、四角形を先に表示された数字の順番どおりに押していくかたちで記憶力を計測された。数字の表示時間は、0.65秒、0.43秒、0.21秒と変更した。

 その結果、チンパンジーの子どもは3頭とも、大学生よりも速く、正確に数字を押すことができた。雑音を流して邪魔をしても、結果は同じだった。また、概して子どものチンパンジーのほうが、大人よりも優れた記憶力を示した。

 実験結果からチンパンジーの子どもには、複雑な絵や図柄を詳細かつ正確に、瞬間的に記憶できる「直観像記憶」と呼ばれる能力が備わっていると考えられる。

 今回の実験結果について松沢所長は、「脳のキャパシティーには限りがある。ヒトの場合は、例えば言語のように新たな能力を身に着けるたび、古い能力をなくしていくのだろう」と語り、ヒトが成長につれて瞬間的記憶力を失うとの説を明らかにした。また、チンパンジーでも大人より子どものほうが優れた記憶力を発揮したことから、チンパンジーの場合も成長とともにこの能力が低下するのだろうと指摘した。

 チンパンジーの知能の高さは、これまでにもさまざまな研究で明らかにされている。ヒトとの言葉の壁を初めて破ったと言われるチンパンジーのワショー(Washoe)は、250語の手話を理解した。ワショーは10月、飼育先の米国の大学研究施設で、42歳で死亡した。(c)AFP