【11月27日 AFP】腕の切断手術を受けた人の胸部にその神経を再びつなぐことにより、患者は失った腕や手を「感じる」ことができるようになる。米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)電子版に26日、研究結果が発表された。

 シカゴリハビリテーション研究所(Rehabilitation Institute of Chicago)と米ノースウエスタン大学(Northwestern University)の科学者らは、事故により腕を失った男女ひとりずつ、2人の患者を対象に、手から脳に感覚を伝える主要神経を胸部に再接続した。

 数か月後、再接続した神経の定着を確認したのちにこの神経周辺に物理的圧力、熱さや冷たさ、電気的刺激を加えたところ、患者は失った腕や手を感じることができた。

 手のどの部分を感じるのか特定できたこともあった。女性患者の場合は、皮膚のある部位が強く引っ張られたり、薬指の関節が伸ばされたりする感覚があった。また両者とも、その刺激を胸部の神経で感じているか、失った腕で感じているか区別することができた。

 科学者らは、このような感覚の回復は、義手や義足など人工装具への神経系導入への足がかりになると指摘する。

「この発見により、切断手術を受けた人が人工装具を自分の手足のように感じられる日が来るかもしれない」と研究者らは語る。

 今回の実験は、電気熱傷で両腕の肩から下を失った54歳の男性と、自動車事故により左上腕を切断した24歳の女性に対して行われた。

 両者とも、手とつながっていた4本の主要神経を胸部の別の場所に移し、胸部筋肉に接続した。

 男性は、腕を失った9か月後に実験に参加した。神経再接続から5か月後、胸部に刺激を加えるテストを開始したところ、あるはずのない腕の感覚を感じることができた。胸部に与える刺激の場所や強さによって、手のひら、手の甲など、感じる部位が変わった。

 女性は、事故の15か月後に実験に参加した。神経再接続から4か月後に刺激を加えるテストを開始したところ、失った手や手首の感覚を感じることができた。

 実験では、再接続した4本すべての主要神経の完全な回復は見られなかった。研究チームは、患者の空間認知や複雑な感覚を操る能力に限界があるのかもしれないとの見方を示している。(c)AFP