【11月15日 AFP】英国サリー大学(University of Surrey)の研究チームは14日、光を徐々に減速させ、ついには静止させることに成功したと発表した。将来の超高速コンピューター開発に向けた大きな前進になるとしている。

 この研究はサリー大学のOrtwin Hess教授と大学院生のKosmas Tsakmakidisさんが実施し、英科学雑誌ネイチャー(Nature)に論文が掲載された。「trapped rainbow(閉じこめられた虹)」と名付けた技術を使い、電子に代わって光に情報を記録することで、光データ記憶技術の強化につながるという。

 光を制御できれば、光データのパケットが一点に集中する状態の解消にもつながる。一部のパケットを減速させてほかのパケットを通過させれば、渋滞を解消するような形でデータが流れやすくする。

 研究では、メタマテリアルという複合素材の特性である「負の屈折率」を活用した。光は通常の物体に遮られた場合、即座に跳ね返るわけではなく遮断物をよけるようにして前に進む。一方メタマテリアルが使用された場合、光は物体に添って逆行する。

 ヘス氏は、負の屈折率を持つメタマテリアルの層で「サンドイッチ」状に囲んだガラスのプリズムを作成。プリズムは先端がとがった形をしており、白い光のパケットを、このプリズムの広い方から入れて通過させると、とがった先端部分に向かって進みながら減速し、やがて静止して動かなくなる。

 「Trapped rainbow」の名称は、白い光の周波数が赤・燈・黄・緑・青・藍・紫の7色で構成されていることに由来する。研究ではこの構成を利用して各周波数を1つづつ別々の地点で停止させ、最終的に光そのものを停止させた。

 同大学が発表したプレスリリースは、この技術によってデータ処理技術を大幅に向上させる道が開けたと解説。「これまで光を減速させるためには超低温などの環境が必要で、コストも非常に高かった。今回の技術により、コンピューターのような機器のメモリー保存に電子ではなく光を使うことが可能になり、容量の1000%増大も実現可能になる」と述べている。(c)AFP