【11月10日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は小惑星の衝突の危険性への備えを怠り、人類を滅亡の危機にさらしている――。8日に行われた米議会公聴会で、議員の間からは非難の声があがった。

■NASAは予算制約から小惑星観測を縮小する方針

 NASAは、およそ6500万年前の恐竜絶滅の原因とされる規模の「地球近傍天体(NEO)」が再度地球に襲来する可能性は、予算を割くには小さすぎると訴えている。同局のScott Pace氏は議員らに対し、「資金には限りがあるうえ、すでに課されている戦略目標とは別にNEOの探知を行うことは不可能だ」と述べた。

 小惑星の衝突は、1990年代の映画「アルマゲドン(Armageddon)」や「ディープ・インパクト(Deep Impact)」などでかなり身近な存在になった。

■議会の非難集中

 公聴会に参加した議員らは、資金不足で2011年以降の閉鎖が検討されているプエルトリコ(Puerto Rico)アレシボ観測所の電波望遠鏡は、天体追跡にもっとも必要とされる施設だとして、運営支援に当たっているNASAの閉鎖方針を非難している。

 共和党のDana Rohrabacher下院議員は「衝突による被害からの再建費用を検討することに比べれば、(電波望遠鏡の維持は)取るに足らない経費ではないか。下手をすれば地球全体が破壊されてしまうかもしれないというのに」と声を荒げた。

 NASAの大幅な予算削減は、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領が掲げる2020年までの再度の月面着陸および火星などの惑星探査を実現する目標が影響しているとされている。

■2029年4月の小惑星衝突を予測する科学者も

 公聴会では、2029年4月13日に地球に衝突すると予測する科学者も一部にいる小惑星アポフィス(全長約250メートル)も議題に上がった。しかしNASAによると、アポフィスが地球に衝突する可能性は4万5000分の1だという。

 NASAは現在、直径が1キロを超えるNEOの観測しか行っていない。しかしそれほどの大きさのNEOが地球に接近するのは、数十万年に1度とされている。また、6500万年前に恐竜を絶滅させた隕石のような、人類が絶滅する恐れのある衝突物には、少なくとも10キロメートル以上の大きさが必要だという。

■NEO対策の中心はやはりNASA

 地球に衝突する軌道上にある隕石を軌道外にそらす方法としては、以前までは核爆弾の使用などが検討されていた。しかし科学者らは、小規模な衝突物であればロケットなどの小さな物体で軌道をずらすことが可能だとしている。

 最近では欧州および日本政府がNEO対策に着手しつつあるが、世界のNEO対策の98%以上は現在もNASAが行っているという。(c)AFP/Jitendra Joshi