【10月30日 AFP】地球温暖化で危険にさらされている北極海の海氷調査が2008年に約80年ぶりに行われる。フランス人探検家のジャン・ルイ・エティエンヌ(Jean-Louis Etienne)氏による調査のため北極圏へ向かう予定の飛行船が12日、マルセイユ(Marseille)近郊の町マリニャンヌ(Marignane)で披露された。

 エティエンヌ氏は、単独で初めて北極点に到達した探検家。「飛行船を使って北極に到達したのは、1926年に行ったノルウェー人のアムンゼン(Amundsen)氏だけ」と語り、任務の重要性を強調する。

 飛行船は、全長55m、高さ17mでロシア製。2008年4月、エティエンヌ氏が率いるチームを乗せて、海氷の厚さを測るためノルウェー領スヴァールバル諸島(Svalbard Islands)最大のスピッツベルゲン島(Spitsbergen)からアラスカ(Alaska)まで飛行する。

 12日に行われた披露式には、エコロジー担当閣外大臣のナタリー・コシウスコ・モリゼ(Nathalie Kosciusko-Morizet)氏とモナコのアルベール王子(Prince Albert)も出席。

 同じく披露式に姿を見せたArthor Tchilingarovロシア下院副議長は「ロシアがこのようなプロジェクトに参加できたことを大変嬉しく思う」と述べ、北極の主権に対するロシアの存在感を示した。

 今年9月には、米コロラド州ボルダー(Boulder)を拠点とする雪氷データセンター(National Snow and Ice Data CenterNSIDC)の調査により、海氷の面積がこれまでで最小の413万平方キロメートルに縮小していることが明らかになった。

「今、海氷は急速に減少している。人工衛星のおかげで表面の状態は分かるが、それだけではなく厚さも知る必要がある」とエティエンヌ氏は語る。

 今回の調査では、電磁誘導とレーザー高度計を使用した計測装置「The EM Bird」により、北極海に浮かぶ氷の厚さを測定する。海氷の厚さは約2.5~3mと予想されている。測定結果は極地調査のため今年から次年にかけて取り組まれている世界最大のプロジェクトの一環として、研究に大きく貢献することが期待されている。

 同プロジェクトの予算は4年間で推定400万ユーロ(約6億6000万円)。フランスの石油グループが支援を行う。さらに飛行船の製造費用は350万ユーロ(約5億8000万円)となっている。

 1920年代に一般的だった飛行船は、1937年ニュージャージー(New Jersey)で起こったLZ129ヒンデンブルク(LZ129 Hindenburg)号爆発事故により廃れてしまった。

 しかし飛行船には利点もある。エティエンヌ氏は、「飛行船は振動が少ないので繊細な計測装置を使った調査を行うことができる。さらに航続距離が長いため広範囲の調査が可能だ」と説明する。(c)AFP