【10月16日 AFP】うわさが真実と矛盾している場合、「人はうわさを基に意思決定を行う」との研究結果が、15日発行の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 研究を行ったのは、マックスプランク進化生物学研究所(Max-Planck Institute for Evolutionary Biology)の生物学者、ラルフ・ゾンマーフェルト(Ralf Sommerfeld)氏率いる研究チーム。同チームは、ある人の評判に関するうわさが、その人に対する態度にどのように影響するかを調査した。

 調査の一環として、研究チームはある実験を行った。実験では、126人の大学生にそれぞれ10ユーロ(約1700円)を与える。コンピューターゲームを用いて、各学生はほかのメンバーに対し、決められた額(1.25ユーロ、約210円)の寄付金を渡すか渡さないかと選ぶ。

 次のラウンドでは各学生に対し、前ラウンドでの相手の行動、特に寄付の有無を示したメモが渡される。相手が前ラウンドで寄付したとのメモを受け取った学生は、自らも寄付する傾向にあったという。

 さらに別の実験が行われた。学生に直近のラウンドでの相手の行動を示すリストを渡すと同時に、そのリストに書かれた事実に反するうわさを流した。すると驚いたことに、学生は確固たる事実であるリストではなく、うわさに導かれて意思決定を行う傾向が見られた。

「人はうわさに左右されやすい。自分の目で見たものと反していても、うわさのほうを信じる」とゾンマーフェルト氏は語る。うわさは有益な情報収集手段として発展してきた経緯があるため、人はうわさにある程度の信用を置くというのだ。

 実験結果から、ゾンマーフェルト氏は「人がうわさなどの口コミ情報を基に意思決定を行ってきたことがわかる」とし、「特に他人について、直接的な情報よりも間接的な情報が多く得られるような環境では、そうした意思決定プロセスが多く見られるはずだ」と指摘している。

 その場合、人はさまざまな情報源から得られるうわさを、間接的な情報としてできるだけ多く収集しようとする。「そうすることで、他人について収集できるわずかばかりの直接的な情報から導かれる人物像よりも、いっそう鮮明な人物像を描けるようになる」と研究チームはまとめている。(c)AFP