【10月9日 AFP】成長ホルモンに頼らずに牛乳の生産量を増やす安価な薬品の製造に成功したとの研究結果が、8日発行の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 研究を発表したのは、オハイオ州シンシナティ大学(University of Cincinnati)医学部の研究者、ネルソン・ホースマン(Nelson Horseman)氏率いる研究チーム。研究によると、乳腺のセロトニン量を抑制することで、牛乳の生産量を15%増やすことが可能となる。

 脳内のセロトニン量の低下は従来、うつなどの気分障害を引き起こすものだったが、チームはウシをうつ状態にすることなく、乳腺のセロトニン量を削減する効果があるとみられる薬品の製造に成功したという。ホースマン氏は「ウシが落ち込んでいるかどうか見分けられたわけではないが、(ホルモン量を調整する薬品は)脳に影響を与えていない」と主張する。

 研究チームは、セロトニンが牛乳の生産を遅らせる信号を送る化学物質であることを発見。ヒト細胞を利用した実験で、ヒトの乳腺が乳で満たされるとセロトニンが合成され、それ以上の乳の分泌を抑制することをつきとめた。

 研究チームは、この研究結果を乳製品の生産量向上のために利用することを目指し、薬品の特許を取得。まもなく、乳牛での試験を開始する。

 ホースマン氏は「薬品が牛乳にも現れるかどうか確認しなければならない。もし現れるのであれば、低温殺菌プロセスで除去できるかどうかの確認が必要だ」と試験の趣旨を語った。

 現在のホルモン療法は、新興国の農家にとっては高価すぎる一方、欧州では牛乳にホルモンが残留するとの懸念から、その使用が禁止されている。
 
 研究チームの薬品を使った牛乳の増産量は成長ホルモン療法によるものと同程度だ。しかも、この薬はより簡単で安価に合成することができる上、注射ではなく経口投与できる点が売りだ。

「われわれの最終目標は、副作用なしに牛乳生産量を効果的に増やすことだ」とホースマン氏は抱負を語った。(c)AFP