【9月20日 AFP】グルジアのドマニシ(Dmanisi)近郊で見つかった推定177万年前のものとみられる初期人類の骨の化石を調査した結果、初期人類はこれまで考えられていたよりも種の幅が広かった可能性があることがわかった。19日発行の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された研究報告により明らかになった。

 この発掘を行ったのはグルジア国立博物館(Georgian National Museum)のDavid Lordkipanidze氏率いる研究チーム。

 このほど発掘された骨が、初期人類とその後の時代の人類の両方の特徴を併せ持ち、これまで考えられている人類の進化のどの段階にも当てはまらないことから、初期人類はこれまで考えられていたよりも種の幅が広かったという可能性が浮上した。今後、この発見が考古学界で物議を醸すのは必至とみられている。

 ドマニシで発掘された初期人類の骨は、アフリカ以外で発見された最古の人類化石とされている。約200万年前にアフリカに現れて急速に欧州やアジアに広がったとされている初期のホモ属、ホモ・エレクタス(Homo erectus)のものと多くの点で似ている。ヒトに良く似た背骨があり、下半身は長い距離を歩けるような進んだ特徴をもっている。男女の大きさにあまり相違がないことも、ホモ・エレクタスやホモ・サピエンスの仲間であることを示している。

 ところが、この人骨はその前段階の種であるホモ・ハビリスの特徴も併せ持っているうえ、それよりずっと以前の400万年前にアフリカに最初に現れたとされる猿人アウストラロピテクスの特徴すら確認される。

 身体に対する頭の大きさの割合は原始人類の種の中でも最も小さく、身長はチンパンジーとさほど変わらない。今回発見された遺体4体の中で最も大きかった遺骨は48キロから50キロで、身長は147センチから161センチと推定される。現生人類との主要な違いは、ひじから手首までの前腕を身体より前に旋回することができないことだ。こうした特徴はは人類のどの進化段階にも当てはまらない。

 これと同時代のものと思われる人骨の化石が最近、ケニアのトゥルカナ(Turkana)湖付近でも発見されたことを併せて考えると、アフリカやユーラシアに広がっていった初期人類はこれまで思われていたより古くから存在し、その特徴にも多様な広がりがあったと推定できると、ハーバード大学のダニエル・リーバーマン(Daniel Leiberman)氏が「ネイチャー」同号への寄稿文の中で指摘している。

 またリーバーマン氏によると、両者が同じ種から派生した可能性もあり、その場合には初期のホモ・エレクタスは極めて広域にわたり分布していただけでなく、身体や脳の大きさは極めて多様だったということになる。また、グルジアの人骨が古い時代と新しい時代の特徴を併せ持っていることは、環境への適用能力が高かったことを示しているという。(c)AFP/Marlowe Hood