【9月19日 AFP】DNAバーコード技術を用いて、地球上の動植物50万種のデータベースを作るという野心的なプロジェクトがカナダの研究者グループの手で進められている。

 研究者らは、「月へのロケット打ち上げに匹敵する生物多様性分野の研究」ともいわれる同プロジェクトの5年がかりの初期段階のために、1億5000万ドル(約174億円)の資金を集めようとしている。
 
 DNAの短い配列だけを利用して生物を識別するDNAバーコードの技術は、公衆衛生、環境保護など幅広い分野への応用が期待される。

 同技術を利用すれば、外国から違法な魚や木材の種が入り込むことを阻止し、蚊などの害虫を駆除することができる上、鳥と航空機の衝突回数を減らすこともできる可能性があるという。

■DNAバーコード技術の国際会議

 プロジェクトの先頭に立っているカナダのDNA バーコーディングセンター(Canadian Centre for DNA Barcoding)のPaul Hebert氏は、台北(Taipei)で開催中の会議で「カナダで『International Barcode of Life Project』を立ち上げ、5年計画で活動を進めていく」と語った。同氏によると、プロジェクト全体の完了には、15年はかかるという。 

 この台北の会議には、45か国から研究者350人が集まり、DNAバーコード技術について議論する。

 現在地球上で確認されている生物種の数は約180万、だがその他にも1000万種が知られずに存在していると推定されている。

 DNAバーコードの技術は進歩がめざましいため、SFのように未知の生物を認識することができる日が10年以内に訪れると科学者らは期待する。

「宇宙を舞台にした映画『スター・トレック(Star Trek)』のように、スキャンするだけで、その生物の画像、名前、機能がただちにわかるようになるだろう」と台湾の中央研究院(Academia Sinica)のAllen Chen氏。

 すでに携帯型のバーコード装置の開発は始まっており、全地球測位システム(GPS)を用いてバーコードのデータバンクを利用できるようになると会議の議長の1人、台湾のShao Kwang-tsao氏は見通しを語った。

 各国の研究者はこうしたテクノロジーの開発に大々的に取り組むことになるとエベール氏は語った。

 今週台湾で開催されている国際会議は、ワシントンに拠点をおくConsortium for the Barcode of Lifeの主催。同コンソーシアムはHebert氏の呼びかけで2003年に設立され、今では160の組織が参加している。その1つが台湾の中央研究院で、今回の国際会議を他の2つの組織とともに企画している。

 最初の会議が2005年にロンドンで開かれた当時は、生物1万2700種のDNAサンプル3万3000個が同コンソーシアムのデータバンクに集められていた。

 現在ではそれが3万1000種の29万サンプルにふくらみ、そこには世界に1万種いるといわれる鳥類の20%と、3万5000種いるといわれる海水魚、淡水魚の10%が含まれている。

 この技術の応用分野は、食品の安全性、消費者保護、薬草の識別など多岐にわたるため、特に米国、カナダ、および欧州で高い注目を集めつつある。

 英国の研究者は地球上に存在すると推定される蚊の80%に当たる2800種をバーコード化する作業に着手している。同作業は2年以内に完了すると見られ、毎年世界で5億人が感染するといわれるマラリアの対策に貢献することが期待されている。(c)AFP/Benjamin Yeh