【9月6日 AFP】(一部更新)映画「エイリアン(Alien)」シリーズに出てくる宇宙の怪獣のように、のどの奥から2つめのあごを出して獲物を捕獲するウツボの生態が明らかになり研究者を驚かせている。

 自然の生物には本来、一度捕らえた獲物を逃さないためのさまざまな驚異的な機能が備わっている。

 ヘビはあごの番(つがい)を外すことで大きな獲物を飲み込むことができるし、魚や一部のウナギは、口の中に吸い込み装置のような機能を備えている。ブダイ科の魚のエラの間には歯並びに似た骨が備わっている。

 カリフォルニア大学デービス校(University of California at Davis)の研究者は、海底の割れ目に生息し、体長3メートルに及ぶこともあるウツボ属の少なくとも1種類には、カミソリのように鋭く、カギ形をした歯が並んだ移動式のあごがついていることを発見した。

「のどの奥(咽頭)の部分についているあご」を猛烈な速度で口内に突き出すことで、ウツボがいったん捕獲した獲物がもがいて脱出する可能性はほぼなくなるという仕組み。

 5日に英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された記事によると、発見は研究者のある種の直感から始まったという。

 過去の研究から、ウナギなどの一部は捕食の際に口内吸い込み機能を使わないことが明らかになっていた。海洋生物学者のリタ・メタ(Rita Metha)さんとピーター・ウェインライト(Peter Wainwright)さんの2人は、ウツボの場合も事情は同じかどうか疑問を持った。

 この点を明らかにするために、実験室内の水槽でトラウツボ属のレティキュレイトモレイ(Muraena retifera)が捕食する様子を高速カメラで撮影すると、フィルムには2つめのあごがはっきりと写っていた。

 さらにあごの内部構造を探るために、ヒトの食物消化の過程を撮影する際に用いられるX線透視システムによる分析を行った結果、ウツボは一揃いの歯並びを持つ2つめのあごを使っていることが明らかになった。

 2つめのあごが猛烈な速度で突き出てくる構造もそうだが、そのことがこれまで知られていなかったことにも注目が集まる。ウツボは珍しい魚ではないが、めったにヒトの食用にならなかったためだろうと研究者は推測する。

 また、海底の割れ目の中で生活しているために漁業の網にかからないことも、実態の解明が遅れた理由と見られる。(c)AFP/Marlowe Hood