【8月23日 AFP】エチオピアで約1000万年前の地層から発見された化石によって、ヒトと類人猿の分岐時期がこれまで考えられていたより600から700万年さかのぼる可能性が出てきた。東京大学(University of Tokyo)総合研究博物館の諏訪元(Gen Suwa)教授(古人類学)ら日本とエチオピアの研究チームが、23日付の英科学誌「ネイチャー(Nature)」上で発表した。

 発見された化石はゴリラの直系の先祖にあたる最も古い類人猿の犬歯1本と臼歯8本で、エチオピアの首都アディスアベバ(Addis Ababa)の東約170キロにある荒れた低木地で発見されたという。これまでほとんど見つからずにいた。

 研究チームなどの見解では、類人猿のアフリカ大陸での痕跡が1000万年前から今日までほとんど発見されていないことから、多くの研究者はヒトと現存する大型類人猿の分岐は、ユーラシア大陸を移動しながら、長期にわたる進化の過程で行われたと結論付けていた。しかし、今回の発見でヒトと類人猿の起源をアフリカとすることに、ほとんど疑いの余地がなくなったという。

 米オハイオ(Ohio)州立ケント大学(Kent State University)の古人類学者Owen Lovejoy教授によると、今回の発見により、(ヒトと類人猿の)最後の共通祖先がアフリカ大陸を起源とすることが決定的に証明されたという。

 また、同州クリーブランド自然史博物館(Cleveland Museum of Natural History)の自然人類学者Yohannes Haile-Sela氏も、「人類の起源に関するわれわれの理解を大きく飛躍させる」との見解を示した。

 しかし、今回の発見で最も驚くべきことは、ヒトの祖先がゴリラやオランウータン、チンパンジーなどの類人猿から分岐したのが、分子遺伝学を基礎とする研究でこれまで主張されてきたよりも数百万年もさかのぼる可能性が示されたことだと研究者は口をそろえる。

 ヒトの祖先の痕跡は、約600から700万年前で途切れていたが、今回の発見で初期のゴリラの祖先が過去1000から1050万年前に存在したことが示されたため、ヒトと類人猿の分岐がそれ以前に起こったことも示唆された。

 研究チームは「ヒトが類人猿からどのように分岐したのか、実際には何も分かっていない」としながらも、ヒトとオランウータンの分岐が2000万年前にまでさかのぼる可能性もあると予想する。

 研究チームはまた、発見した歯の臼歯が珍しい特徴を持っていることからゴリラの祖先のものと結論付け、「チョローラピテクス・アビシニクス(Chororapithecus abyssinicus)」と名付けたが、一方で歯の特徴は完全に一致するわけではないため、一部の研究者から反証される可能性もある。(c)AFP/Marlowe Hood