【7月18日 AFP】80年前に発見され、どこまでいってもそこから抜け出せない閉塞状況を示す芸術上のシンボルともなっている「メビウスの帯」の謎を2人の数学者が解いたと発表した。

 オランダの芸術家マウリッツ・コルネリス・エッシャー(Maurits Cornelis Escher)の作品で広く知られるようになった「メビウスの帯」は、1枚の紙片か柔らかい素材で簡単に作ることができる。紙片か素材の一方の端を180度ひねって他方の端につけるとできあがり。この簡単な輪の構造をもつ帯は、両面ではなく片面しか持たないという興味深い性質を持っていることがエッシャーにより指摘され普及した。

 1930年以来、「メビウスの帯」の性質を方程式の形で説明するという難問を、力学専門家はどうしても解くことができなかった。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(University College London)の非線形力学専門家のGert van der Heijden氏とEugene Starostin氏が、「数学的な美しさ」をもつこの帯の謎の解法を、15日に発表した論文のなかで明らかにしたという。

 「メビウスの帯」の形状を決定するのはエネルギー密度がそれぞれ異なる場所だという。「エネルギー密度」とは、蓄積された弾力性エネルギーのことで、「メビウスの帯」を作るときにひねりが入ることで帯の中に含まれる。帯がもっとも激しくねじれているところはエネルギー密度が最大になり、逆に、もっとも平らでねじれがない部分はエネルギー密度も最低になる。

 もし帯の幅が長さに比例して広くなれば、エネルギー密度の存在する場所も移動し、その結果、形状も変化することを2人の方程式は解明したという。帯の幅が広いほど、ほとんど平らな「三角地帯」が帯上に形成され、これは紙がくしゃくしゃに丸められた状態と同じだという。

 きわめて難解に思われる解法だが、これは実際的な応用性も持つという。特定の構造物に力が加わったときどこで裂けるかを予測することが可能になり、薬学における新薬開発モデルにも貢献するという。

 「メビウスの帯」は1858年に発見したドイツの数学者アウグスト・メビウス(August Ferdinand Moebius)にちなんでつけられた。もう1人のドイツ人、Johann Benedict Listingも、全く別の経路で偶然同じ年にこれを発見した。(c)AFP