半年以上にわたる火星への旅のシミュレーション実施へ
このニュースをシェア
【6月22日 AFP】あなたは人類存続の危機に、5人の男女とともに火星へ向かう宇宙船内にいる。17か月以上小さな避難船を囲むのは危険に満ちた宇宙空間のみ。6人で業務と英雄的行為を分担し、緊急事態や機器の故障などの危険と戦いながら、この前人未到の旅を続ける。
同時にそれぞれの個人的な習慣や偏見、体臭、ねたみや対抗意識を共有し、日々味気のない食料を分け合わなければならない。扉を開けてこの場を去ることができない、うちに帰る近道は存在しないという事実によってこの憤まんはさらに増大する。
足のツメをほじる癖のあるうつ状態にある同僚の乗組員が、38回目に家族の写真を見せたとき、頭の中に1970年代のホラー映画のキャッチフレーズが浮かぶ。
「宇宙ではだれにもあなたの叫び声は届かない」
1993年にロシアの宇宙船ミール(Mir)で186日間を宇宙で過ごしたフランス人の宇宙飛行士ジャン=ピエール・エニュレ(Jean-Pierre Haignere)氏によると、宇宙空間における「最大の危険は肉体的なことでなく、心理的なもの。自分自身に向き合い自分がどのような人間であるかを発見することだ」という。
宇宙旅行における精神的な忍耐力に対する実験が、最大規模の宇宙飛行のシミュレーションで行われようとしている。
この実験では、モスクワにある研究所の模擬火星探索船の中に6人が520日間、最初の難関を乗り越えれば700日閉じこめられる。
微調整と緊急事態に備えて1度もしくは2度の105日間のシミュレーションが行われた後、問題がなければ、2008年後半にも実験が実施される。
人類にとって宇宙は危険に満ちた空間だが、長期旅行になればさらにその危険性は増大する。有名料理学校の料理人がニンジンを切るような簡単さで人間のDNAを切断する宇宙放射線にさらされる。
無重力によって筋肉は緩み、骨密度が低下する。生命維持装置や通信機器の故障、あるいは小惑星の衝突などの危険も避けられない。
しかし、集中し精神を正常に保つことの大変さはこれらの危険をしのぐものだ。
6人の被験者は相互に連結された5つのモジュールに閉じこめられる。そこには共通の居間、個人の寝室と風呂、司令室とフィットネスルームなどがあり、合計60立法メートルのトラックのコンテナ9台に相当する大きさになる。
疑似宇宙管制センター以外との外界との接触は禁じられる。ラジオやEメールによる通信は、40分以上遅れて到着するが、これは地球と火星の距離5600万キロを伝達する時間を計算に入れている。
食事は国際宇宙センター(ISS)と同じ種類のパックで、祝日にはごちそうが出るが、アルコールと喫煙は禁止されている。
6人の乗組員は250日間にわたり火星への宇宙旅行をシミュレーションする。さらにその中から3人が、火星着陸およびそこでの任務実施をシミュレーションするために30日間、船の一部に閉じこめられる。3人はそれから母船にドッキングし240日間かけて地球に帰還する。
欧州宇宙機関(European Space Agency、ESA)のMarc Heppener氏によると、宇宙船の扉は閉ざされたままで、火事のような「非常に深刻な緊急事態」以外だれも介入したり勝手に出ることはできない。虫垂炎のような外科的な緊急事態でも乗組員だけで対処する可能性もあるという。
この実験を実行するロシアのInstitute for Biomedical ProblemsのViktor Baranov氏は、候補者に150人の応募を受け取ったという。19日のパリ航空ショーでESAは加盟国の一般市民からの応募を募った。
男女比などについては決まっていない。性的な対立がないため単一性の方が効率的だと考える専門家もいる一方、異性の存在が鎮静効果をもたらし、問題に対しても違った視点を提供できると考える専門家もいる。男女比についても男性5人と女性1人、あるいはその逆であれば性的な対立が引き起こされる可能性があるし、3対3であればそれぞれが部族主義的になってしまうかもしれない。Heppener氏は「4対2が適当かもしれない」と考えている。
1999年にモスクワで行われた110日間の実験で起こった醜い事件を思い起こす人も多いだろう。ロシア人男性2人が殴り合いし、カナダ人女性にキスを強要した。女性は任務を遂行したが、扉に鍵をつけることを主張した。
乗組員候補は、25-50歳の技師、生物学者または医者で、ロシア語と英語に堪能でなければならない。また心理学プロファイルなどの性格試験による選考もある。Heppener氏は火星への旅と同様に異例の組み合わせだと認めつつ「乗組員はチームプレーヤーかつ個人プレーヤーである必要がある」と付け加えた。(c)AFP/Richard Ingham
同時にそれぞれの個人的な習慣や偏見、体臭、ねたみや対抗意識を共有し、日々味気のない食料を分け合わなければならない。扉を開けてこの場を去ることができない、うちに帰る近道は存在しないという事実によってこの憤まんはさらに増大する。
足のツメをほじる癖のあるうつ状態にある同僚の乗組員が、38回目に家族の写真を見せたとき、頭の中に1970年代のホラー映画のキャッチフレーズが浮かぶ。
「宇宙ではだれにもあなたの叫び声は届かない」
1993年にロシアの宇宙船ミール(Mir)で186日間を宇宙で過ごしたフランス人の宇宙飛行士ジャン=ピエール・エニュレ(Jean-Pierre Haignere)氏によると、宇宙空間における「最大の危険は肉体的なことでなく、心理的なもの。自分自身に向き合い自分がどのような人間であるかを発見することだ」という。
宇宙旅行における精神的な忍耐力に対する実験が、最大規模の宇宙飛行のシミュレーションで行われようとしている。
この実験では、モスクワにある研究所の模擬火星探索船の中に6人が520日間、最初の難関を乗り越えれば700日閉じこめられる。
微調整と緊急事態に備えて1度もしくは2度の105日間のシミュレーションが行われた後、問題がなければ、2008年後半にも実験が実施される。
人類にとって宇宙は危険に満ちた空間だが、長期旅行になればさらにその危険性は増大する。有名料理学校の料理人がニンジンを切るような簡単さで人間のDNAを切断する宇宙放射線にさらされる。
無重力によって筋肉は緩み、骨密度が低下する。生命維持装置や通信機器の故障、あるいは小惑星の衝突などの危険も避けられない。
しかし、集中し精神を正常に保つことの大変さはこれらの危険をしのぐものだ。
6人の被験者は相互に連結された5つのモジュールに閉じこめられる。そこには共通の居間、個人の寝室と風呂、司令室とフィットネスルームなどがあり、合計60立法メートルのトラックのコンテナ9台に相当する大きさになる。
疑似宇宙管制センター以外との外界との接触は禁じられる。ラジオやEメールによる通信は、40分以上遅れて到着するが、これは地球と火星の距離5600万キロを伝達する時間を計算に入れている。
食事は国際宇宙センター(ISS)と同じ種類のパックで、祝日にはごちそうが出るが、アルコールと喫煙は禁止されている。
6人の乗組員は250日間にわたり火星への宇宙旅行をシミュレーションする。さらにその中から3人が、火星着陸およびそこでの任務実施をシミュレーションするために30日間、船の一部に閉じこめられる。3人はそれから母船にドッキングし240日間かけて地球に帰還する。
欧州宇宙機関(European Space Agency、ESA)のMarc Heppener氏によると、宇宙船の扉は閉ざされたままで、火事のような「非常に深刻な緊急事態」以外だれも介入したり勝手に出ることはできない。虫垂炎のような外科的な緊急事態でも乗組員だけで対処する可能性もあるという。
この実験を実行するロシアのInstitute for Biomedical ProblemsのViktor Baranov氏は、候補者に150人の応募を受け取ったという。19日のパリ航空ショーでESAは加盟国の一般市民からの応募を募った。
男女比などについては決まっていない。性的な対立がないため単一性の方が効率的だと考える専門家もいる一方、異性の存在が鎮静効果をもたらし、問題に対しても違った視点を提供できると考える専門家もいる。男女比についても男性5人と女性1人、あるいはその逆であれば性的な対立が引き起こされる可能性があるし、3対3であればそれぞれが部族主義的になってしまうかもしれない。Heppener氏は「4対2が適当かもしれない」と考えている。
1999年にモスクワで行われた110日間の実験で起こった醜い事件を思い起こす人も多いだろう。ロシア人男性2人が殴り合いし、カナダ人女性にキスを強要した。女性は任務を遂行したが、扉に鍵をつけることを主張した。
乗組員候補は、25-50歳の技師、生物学者または医者で、ロシア語と英語に堪能でなければならない。また心理学プロファイルなどの性格試験による選考もある。Heppener氏は火星への旅と同様に異例の組み合わせだと認めつつ「乗組員はチームプレーヤーかつ個人プレーヤーである必要がある」と付け加えた。(c)AFP/Richard Ingham