【フロリダ/米国 18日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士らが、海面下18メートルで「友好的な」サメやカメに囲まれながら海中訓練を受けている。海中での動作は、無重力の宇宙空間での動きに似ていることから、「月探査ミッション」に備えた訓練が、海底で行われているのだ。

■「海底研究室」内外の環境は「宇宙空間」に似ている

 海洋大気庁(NOAA)の海底研究室「アクエリアス(Aquarius Underwater Laboratory)」で行われているのは、NASA極限環境ミッション運用(NASA Extreme Environment Mission Operations、NEEMO)の一環の訓練だ。月面歩行技術、宇宙医療その他、宇宙探査活動などの研究・訓練のため、2001年以降、12回実施されている。

 宇宙飛行士2人と医師で構成されるチームが、サンゴに覆われた黄色い潜水艦風の密閉された海底施設「アクエリアス」内で12日間を過ごす。「アクエリアス」は、フロリダ州キーラーゴ(Key Largo)沖にある世界唯一の海底研究室だ。

 この研究室の居住空間や周囲の環境が、宇宙空間と似ていることは専門家のお墨付き。NEEMOのプロジェクト・マネージャーのビル・トッド(Bill Todd)氏も「宇宙訓練を行うには、理想的な環境」と話す。

■海底で「ムーンウオーク」の訓練に励む

 この日は、NASAの宇宙ミッションに参加予定のJose Hernandez宇宙飛行士とJosef Schmid医師が、黄色いヘルメット、潜水服に足ヒレを身につけ、海底で月面で行うスローモーションの跳躍などの訓練を行った。

 訓練に参加する宇宙飛行士らは、海底での「ムーンウオーク」により、地球の6分の1しかない月での重力をシミュレーション体験することができる。ロープを身につけ海底で大きな跳躍を繰り返すHernandez飛行士とSchmid医師の姿は、まさに月面での動作そのものだ。

 2人はまた、砂に覆われた海底を駆け回ったり、月探査で行われる予定の建設活動の訓練としてチューブ管を引っ張ったり持ち上げるなどした。ほかにも、月面標本の採集訓練として、サンゴの死骸の収集も行った。

 訓練期間中、2人は毎日、海底で数時間の「船外活動」訓練を行い、海底の自宅「アクエリアス」に「帰宅」する。

■宇宙空間での医療的な研究の場としても

 宇宙空間に近い環境が得られる海底は、宇宙飛行士がミッション遂行中に宇宙で直面し得る医療課題の研究にも最適の場所だ。

 この日も、患者役のスタッフに数千キロ離れた地点から、遠隔操作でロボットアームを動かして手術を施す訓練が行われた。

 人間の体内に潜伏するウイルスは、海中では空気に囲まれた地上よりも、より早く増殖することが知られている。NASAでは、こうした研究を通じ、宇宙空間でウイルスが急激に増殖する原因を解明したいとしている。

 写真は海底訓練を行うSchmid(右)医師とHernandez飛行士。(2007年5月16日撮影)(c)AFP/NASA