【パリ 18日 AFP】南極大陸付近ウェッデル海(Weddell Sea)の光も届かない深海底には、思いがけないほど多様な海洋生物が生息していることが分かった。ドイツのハンブルク動物学博物館(Zoological Museum of Hamburg)の海洋生物学者、アンジェリカ・ブラント(Angelika Brandt)氏率いる21人の国際研究チームが16日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 研究チームは3年間にわたりウェッデル海を調査し、最深6000メートルまでに生息する生物群の標本を収集。初めて発見された生物群は700種以上に及ぶという。

 ウェッデル海はまだあまり調査が進んでいない海域で、深海循環の発生に大きく関わっていると考えられている。

 研究チームのメンバーも、自らの発見に驚きを隠せない様子だ。ブラント氏はフランス通信(AFP)の取材に対し、「発見された新種の数に驚いている。種の多様性に乏しいと報告されている北極圏地域と同じパターンが確認されると考えていた」と語った。

 新たに発見された生物の大半は甲殻類の1種の等脚類で、顕微鏡サイズから30センチ近くまで大きさは様々だった。

 整理された674種のうち、80%超がこれまで確認されたことのないものだった。このほかには160種の腹足類や双殻類、76種のカイメン類が含まれ、カイメン類の17種は新種だった。

 チームの一員のカトリン・リンゼ(Katrin Linse)氏は「かつては特徴がないと考えられていた深海底が、実際には生き生きと変化に富んだ、生命力溢れる環境だということが分かった」と語る。さらに「この特異な海洋生物の発見は、深海と生物群分布との複雑な関係を理解するための第一歩だ」と付け加えた。

 ブラント氏は今回発見された中でもアメーバ状の生物に最も衝撃を受けたという。これまで生物は、水圧が大きく異なる環境では生息できないと考えられていたが、この生物は6000メートルの深海でも、それよりずっと浅い海中でも生息することができるらしい。

 写真は、新たに発見された甲殻類の一種Ctenocidaris(撮影日不明)。(c)AFP/GERMAN CENTER FOR MARINE BIODIVERSITY/ARMIN ROSE