【パリ/フランス 28日 AFP】72年前にサトウキビの害虫駆除を目的として、オーストラリア北東部に持ち込まれた毒をもつオオヒキガエル(学名Bufo marinus)の生息地が徐々に拡大しており、生物学者らの予測によるとオーストラリア沿岸部の4分の3に達する可能性があるという。オーストラリアの生物学研究グループが28日付けの「英国王立協会生物学会報(Proceedings of the Royal Society B)」で発表した。英国王立協会(Royal Society)は、英国にある科学分野の学術協会。

 毒をもつオオヒキガエルの生息範囲は拡大し続けており、ヒキガエルなどの在来種の存在が脅かされている。

■拡大し続ける生息地

 2006年2月時点でオーストラリアの生物学者らは、オオヒキガエルの生息範囲が熱帯・亜熱帯地域のオーストラリアで100万平方キロメートル以上におよんでいると考えていた。

 同研究グループは今回発表した論文の中で、「現在、オオヒキガエルの生息地は今やクイーンズランド(Queensland)州および北部特別地域(Northern Territory)一帯の120万平方キロメートルにまで拡大している」との見解を発表した。

■高い適応能力

 高温多湿の環境でしか生存できないと考えられていたオオヒキガエルだが、同学会報によれば、さまざまな温度や乾燥に適応可能であることが分かった。月間の気温が5度以下から37度まで変化する地域や、乾燥した地域にもオオヒキガエルが進出している。水分の不足する地域にも勢力を広げている。

 調査にあたった生物学者らは、オーストラリア沿岸の「ウェスタン・オーストラリア(Western Australia)州やオーストラリア南部でもオオヒキガエルが生息可能であると述べている。その結果、生息可能な範囲はオーストラリア大陸の200万平方キロメートルまで達し、その中には国民の大半や多様な生態系が集中している沿岸地域の4分の3が含まれる」と述べ、「今後も生息地の拡大が継続すれば、オーストラリアに固有の野生生物や経済に対する被害が大きくなる」と懸念する。

 ここまでオオヒキガエルが拡大した要因として学者らは「進化」、「捕食動物の不在」および「オオヒキガエルに合った生息環境」を挙げ、「生息地拡大の継続が、オオヒキガエルが新たな環境に適応していることを意味するのであれば、将来的に現時点の予測を上回って拡大する可能性もある」と付け加える。

■長足のカエルは一晩で1.8キロメートル移動可能

 シドニー大学(University of Sydney)のRichard Shine氏が2006年2月に実施した調査では、足の長いカエルは短い足のカエルにはない進化上の利点を有し、より速いペースで移動できることが分かっている。この発見によって、1940年代には1年につき10キロメートルだった拡大範囲が現在50キロメートルまで伸びていることの説明が可能となった。Shine氏によると、雨天の場合、長い足を持つカエルは一晩で1.8キロメートル移動することが可能だという。

 写真はシドニーのTaronga動物園で、飼育係の手のひらに乗っているオオヒキガエル(2005年4月26日撮影)。
(c)AFP/Rob ELLIOTT