【サンフランシスコ/米国 24日 AFP】衣服を透視することができるスキャナーの実用化に向けた実験が24日、アリゾナ(Arizona)州、フェニックス国際空港(Phoenix Sky Harbor International Airport)で開始された。

 米国運輸保安局(Transportation Security Administration、TSA)が同空港の検査ゲートに設置したのは、大型衣装ダンス大の「後方散乱画像」を写し出すエックス線装置。

 新装置のよるスキャン第1号に名乗り出たのは、結婚40年を祝い、妻と旅行中のベトナム戦争従軍経験を持つ退役軍人だった。

 「彼は装置によるスキャンで、何の問題もなかったと語った」と国土安全保障省(Department of Homeland Security)のNico Melendez広報官は話す。

■ スキャン映像は別室に送られる

 同広報官によると、スキャンによって得られた画像データは処理され、近くの別室に置かれたコンピューターのスクリーン上に薄灰色の輪郭となって写し出されるという。また、男性のTSA係官が男性を、女性の係官が女性をそれぞれ検査する。

 「決して裸体が見えるわけではない」とMelendez広報官は述べた上で、「むしろチョークで描いた人の輪郭程度。この技術に使われるエックス線は、衣服を突き抜けるが肌で跳ね返される量」と話す。

 この装置で検査を受ける人は長方形の鉛の板を使って股間の画像をブロックすることができる。

 「この装置は、服の下に何かを隠し持った人を探すことが目的。現在は完全に自由意思で行われている。一方、われわれは不審物を見分けることができる」と報道官は説明する。

 TSAの係官は、スキャンされた人物が衣服の下に何かを隠し持っているのを発見した場合、装置近くの係り官に合図を送り、その人物の衣服を調べる。

■ エックス線量は微量

 装置から発せられるエックス線量は、巡航高度で航行する飛行機内で乗客が2分間に浴びる量に等しいほど低いとされる。

 また、システムは得られた画像を記録したり、転送する機能は持たず、画像は検査後、消去されるという。

 TSAによると、今回3か月にわたって行われるこのスキャナー装置の試験は米国内では初で、有効との見方が強まれば、同様の装置がニューヨークやロサンゼルスなど主要都市の空港に設置されるという。

 プライバシー保護団体は、乗客の衣服の下をのぞき見することがプライバシーの侵害に当たると異議を唱えるが、この実験への正式な抗議は現在までされていない。

 写真は、フェニックス国際空港に設置されたAmerican Science and Engineering, Inc製のスキャナー装置で写し出された男性の画像(左)と女性の画像(右)。(c)AFP/American Science and Engineering, Inc.