【ロサンゼルス/米国 16日 AFP】太古の火星に水が存在していた可能性が一層強まったことが、米アリゾナ大研究チームの報告で明らかになった。これにより、「太古の火星には生命体が存在していた。現在も地下に生存している可能性がある」という仮説の信ぴょう性が高まるとみられている。

■高解像度画像の解析から、いくつかの発見が

 この報告は、サンフランシスコで開かれている全米科学推進協会(AAAS)年次総会で、同研究チームのスティーブン・クリフォード(Stephen Clifford)氏が行ったもの。
 
 同チームが、米航空宇宙局(NASA)の火星探査機マーズ・リコネサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter、MRO)から送られてきた高解像度画像の解析を行ったところ、火星の地層のあちこちに亀裂がみられ、その周囲に白い部分と黒い部分が交互に重なった層状の岩盤があることが分かった。

 地球でも類似した地形が見られ、その原因は、水に含まれる物質との化学反応で岩盤の一部が白色化したものとされている。このことから、火星地層の白色化した岩盤も、数億年以上前に火星地表に水がふんだんに流れていたことを示す証拠だという。

「火星にある渓谷、海岸線の跡、堆積鉱床なども、かつて火星表面に湖や海、あるいは大洋が存在していた証拠だ」とクリフォード氏は指摘している。

 また、同研究チームの1人であるクリス・オオクボ(Chris Okubo)氏は記者会見で、「こうした現象は、風雨や火山活動による周期的堆積があったことも示している」と語った。

■水が存在により、火星に生命体が生存する可能性が広がる

 さらにクリフォード氏によると、同現象は地下水があることを示す確かな証拠でもあるという。 

 火星の地下に水が存在する可能性を示す証拠は、これまでにもいくつか発見されている。2006年12月、米火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor)から送られた画像から、火星の表面に水が浸透していることを示す溝が過去数年以内に形成されたことが判明した。

 これについて一部の科学者らは、「地下水が地表にしみ出して凍る前に、地表の堆積物を運んだ痕跡だ。火星には現在も地下水が存在する」と主張している。

 生命にとって不可欠な水が存在するからといって、火星に生命体がいたという確かな証拠にはなりえない。だが今回の発見は、火星生命体生存説を唱える学者にとって強い後ろ盾になるだろう。

 米アリゾナ大研究チームの研究報告は、16日付の米科学誌サイエンス(Science)に発表される予定。
 
 写真は、火星が地球にもっとも接近する日の前日、NASAハッブル宇宙望遠鏡がとらえた火星の映像(2005年10月28日撮影)。(c)AFP/NASA/ESA