【3月5日 AFP】危険時の緊急連絡機能や、危険スポットを地図上でピン表示する機能など、インドではニューデリー(New Delhi)での集団強姦(ごうかん)事件以降、女性たちが護身にスマートフォン(多機能携帯電話)アプリを活用している。

 インドでは、昨年12月に23歳の女子学生が映画館からの帰路、酔った男の集団に襲われた事件が起きて以降、防犯用のアプリやウェブサイトへの関心が高まっている。

■危険スポットを地図にピン表示、移動経路の追跡機能も

 集団強姦事件に対する怒りが爆発し、抗議行動が起こったインドでは、4人のビジネスウーマンが、嫌がらせを受けた女性たちが怒りの声を発することのできるウェブサイト「Safecity.in」を立ち上げた。

 Safecity.inでは、やじから強姦まで、嫌がらせや暴行を受けた現場を報告し、「おぞましい現場をピン表示」することを呼びかけている。報告された現場はオンラインマップに追加され、登録ユーザーに配信される。

 また、同サイトが連携する携帯端末用アプリ「SafeTrac」は、SOSボタンを押すと緊急連絡先に通報するとともに、親族や友人が移動経路を追跡できるようにするアプリ。IT会社KritiLabsが開発し、無料でダウンロードが可能だ。

 他にも、夜遅くまで働く女性や一人旅をする女性たちの安全を支援する同様のアプリが多数リリースされている。

■アプリ続々登場、開発奨励も

 インドでは、このようなアプリの開発が奨励されている。同国のソフトウェア業界団体「ナスコム(NASSCOM)」は女性の安全を守る最優秀アプリを決めるコンテストを開催。また先月、無料アプリ「Stipator(ラテン語でボディーガードの意味)」にソーシャルイノベーション賞を授与した。

 ニューデリーでの事件以降に性犯罪防止のために設置された政府委員会も、警察に通報する携帯電話アプリの開発を推奨している。インドで最も安全な都市とされるムンバイ(Mumbai)でも、警察当局が独自のICE(緊急時)アプリを1月にリリース。批判の多いアプリだが、すでに数千件のダウンロードがあったという。

 だがインド紙DNAはインドの女性の多くが、アプリの利用に必要なアンドロイド(Android)OS搭載のスマートフォンはおろか、携帯電話すら持つことができないでいると指摘する。

■携帯電話のない女性向けの防犯機器も

 Stipatorの制作者、ラトネシュ・デサイ(Ratnesh Desai)氏とハイデラバード(Hyderabad)勤務のマイクロソフト(Microsoft)従業員3人は、携帯電話を持たない女性のための「リップスティックサイズ」の防犯装置を開発中だ。

 活動家や開発者らは、こういったアプリが流行すれば大きな防犯効果が得られると期待を寄せている。「このようなアプリがあることが広まれば、性的いたずらをしようとする者はもっと慎重にならざるを得ないだろう」とデサイ氏は語った。(c)AFP/Rachel O'Brien