【2月26日 AFP】現金やクレジットカードを持たずにスマートフォン(多機能携帯電話)でショッピングが出来る「モバイルマネー」──この未来のビジネスチャンスで主導権を握ろうと、グローバル金融グループらが火花を散らしている。

 スペインのバルセロナ(Barcelona)で25日に開幕した世界最大のモバイル見本市「モバイル・ワールド・コングレス(Mobile World Congress)」で、クレジットカード大手のマスターカード(MasterCard)、ビザ(Visa)、そしてオンライン決済サービスのペイパル(PayPal)は業界のシェア獲得に奮闘した。

 この市場は、潜在的な見返りが極めて大きい。

 調査会社マーケッツアンドマーケッツ(MarketsandMarkets)によると、モバイルマネー業界は、2013年の138億ドル(約1兆3000億円)から、2018年には2789億ドル(約26兆円)市場に成長する見通しだ。また2018年の携帯電話利用者は全世界で53億人に上っていると予測している。

■マスターカード、クラウドに情報保管する新システム

 マスターカードが発表した新たなデジタル決済システムでは、スマートフォンなど多種多様な機器が利用出来る。「マスターパス(MasterPass)」と名付けられたこのシステムは、「安全なクラウド」にオンラインで顧客の個人情報や銀行取引情報を保管し、ショップで買い物をする際や、インターネットで買い物をする際にその情報を利用する。

 顧客は、短距離無線通信規格「NFC」などを搭載したスマートフォンを専用リーダーにかざすことで決済を行う。また、銀行や店舗は、マスターパスと連携した専用のデジタルウォレットを顧客に提供することができる。このウォレットサービスでは、マスターカード以外のクレジットカードやデビットカードを使うことも可能だ。

■ビザはサムスンと提携

 ビザも同日、スマートフォン端末大手の韓国サムスン電子(Samsung Electronics)と、サムスンのNFC搭載スマートフォンでの決済をめぐり、グローバルな提携を行うことを発表した。

 サムスンの次世代携帯端末にはビザの決済技術が搭載され、一部端末にはビザの非接触式決済システム「Visa payWave」が専用アプリとともに搭載されることになるという。

■ペイパルは新たな決済端末を発表

 一方、ペイパルはモバイル・ワールド・コングレス開幕の5日前、マスターカードとビザの牙城に食い込む計画を発表した。

 ペイパルのデービッド・マーカス(David Marcus)社長は、現金ベースの事業者に暗証番号ベースの「スマート」デビットカードやクレジットカードを提供する新機器を披露した。

 店舗は、アンドロイド(Android)搭載のスマートフォンやiPhone用の「Paypal Here」アプリをダウンロードし、ペイパルの専用カードリーダーを購入してスマートフォンと接続することで、クレジットカードやデビットカード、もしくはペイパル口座による安全な決済や領収書の発行が可能になる。ペイパル側は、決済ごとに「少額手数料」を徴収するという仕組みだ。(c)AFP/Emmanuelle TRECOLLE