【1月25日 AFP】米アップル(Apple)共同創業者の故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏が、人材の引き抜きをしないと約束する「非勧誘協定」に同意しなければ「特許侵害で訴える」などと、脅しとも取れる発言を米携帯情報機器メーカー、パーム(Palm)の当時の社長に対し行っていたことが23日、カリフォルニア(California)州サンノゼ(San Jose)の連邦地裁に提出された民事訴訟の証拠書類によって明らかになった。

 この民事訴訟は、米シリコンバレー(Silicon Valley)のIT大手が極秘裏に、競合他社から人材を引き抜かないとの協定を結んでいたとして、従業員らが2011年にアップルやグーグル(Google)など複数の企業を相手取って起こしたもの。パームのエドワード・コリガン(Edward Colligan)社長(当時)が2007年にジョブズ氏との間でやりとりした電子メールの文面が証拠として提出され、23日に開示された。

 この文書によるとコリガン氏は、07年8月24日付けの電子メールで、ジョブズ氏が電話で提案してきた「非勧誘協定」について「従業員の希望にかかわらず互いに他社の人材を採用しない協定を結ぶというあなたの提案は、間違いであり、違法だ」と指摘。さらに、電話の中でジョブズ氏が、協定に同意しなければ高額の費用がかかる特許訴訟にパームを巻き込むと示唆したことに対し、「両社とも多数の弁護士に多額の費用を払うことになるだけだ」として問題の解決策にはならないと反論した。

 一方、ジョブズ氏はこの電子メールに、「アップルはその返答に納得できない。最終的な判断を下す前に、特許に関する両社のポートフォリオをよく見てみることだ」と返信した。

 コリガン氏は一連の証拠に添えた宣誓供述で、「パームはこの取引に最後まで応じなかった」と述べている。

 スマートフォン製造の先駆けだったパームは2010年、市場での競争に敗れヒューレット・パッカード(Hewlett-PackardHP)に買収された。

 審理は今年11月に行われる予定だが、サンノゼ地裁のルーシー・コー(Lucy Koh)判事は既にアップルのティム・クック(Tim Cook)最高経営責任者(CEO)、グーグルのエリック・シュミット(Eric Schmidt)会長、半導体大手インテル(Intel)のポール・オッテリーニ(Paul Otellini)CEOへの証人尋問が可能なだけの証拠を集めている。

 なお、米司法省は2010年、シリコンバレーのIT企業数社が非勧誘協定を結んでいるとして起こした民事訴訟で各社と和解している。(c)AFP