【1月24日 AFP】人工のDNAを使って大量のデジタルデータを保存する画期的な技術を開発したとする英国の研究チームによる論文が、23日に英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。DNAを冷凍乾燥して保存すれば、数千年後にもデータを残すことが可能かもしれないという。

 保存されたデータは、現在もDNA鑑定などで頻繁に行われている方法と同じ、DNAの配列決定により読み込まれ、コンピューターコードに還元される。

 この技術ではまず、コンピューターの2進コードで使われる「0」と「1」からなるデータ形式を、「0」「1」「2」を使う3進コードに変換する。データはさらに、「A」「C」「G」「T」に基づくDNAコードに変換され、5文字からなる1ブロックが2進コードの1桁を表すのに使われる。さらにこれらの文字は、化学薬品を用いて分子に変換される。

 英ケンブリッジ(Cambridge)にある欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)のニック・ゴールドマン(Nick Goldman)氏らの研究チームによると、この技術では本物のDNAは用いられず、新たな生命を作り出すことを目的とはしていない。作り出される人工コードは生物学の分野では極めて役に立たないものだという。

 世界では膨大な量のデータが蓄積し続けており、人々はその保存方法について頭を悩ませている。磁気ディスクや光ディスクは場所を取る上、適切な気温と湿度の中で保管する必要があり、腐食も避けられない。

 現在の技術では、DNAの配列決定と読み込みに数週間かかるため、DNAへのデータ保存は迅速なデータ取得が必要な用途には適していない。一方で、500~5000年もの長期間にかけてのデータ保存が必要な場合、例えば終末の日に備えた人類の知識や文化の百科事典の作成などには適している。

 研究チームはこの技術について、「唯一の問題はコスト」としつつも、このまま技術発展が進めば、50年以内には実用化可能なまでにコストが抑えられると予測している。(c)AFP/Richard INGHAM