【1月12日 AFP】米ラスベガス(Las Vegas)で開催されている家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(International Consumer Electronics ShowCES)」では、世界の自動車メーカー各社がセンサーやデジタルカメラ、ネットワーク接続といった最新技術を披露している。各社共通のゴールは、自動車事故の撲滅だ。

 独メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)などが掲げているのは「アクティブセキュリティー」。同社広報によると、ドライバーが酒に酔っていない限り「事故を起こす確率が1%未満」の車づくりを目指している。

 米自動車情報サイト、エドマンズ・ドット・コム(Edmunds.com)のアナリスト、ダグ・ニューカム(Doug Newcomb)氏によると、はっきりと打ち出してはいないが各社とも「自律型」の車を手がけてさえいるという。米インターネット検索大手グーグル(Google)が開発中の「自動運転カー」のような車だ。

 グーグルの自動運転カーは試験走行で1度だけ事故を起こしているが、これはドライバーの過失によるものだ。ニューカム氏は、「意見はさまざま」だがグーグルの試験結果は「多くのドライバーより、自動運転カーのほうが賢いと示していると言える」と評価する。

■デジカメやセンサーで、車線や車間距離を維持

 ハンドルを任せっきりにするようなことは近い将来には望めないが、今年のCESに出展された自動車の安全性技術が向かう先は「半自律カー」だと専門家らは口をそろえる。高級車種には既に、ブレーキやハンドルのコントロールを担うコンピューターが搭載されている。

 米フォード(Ford)は、車線維持支援システムを高級車種で提供中。フロントガラスに取り付けたデジタルカメラで進行方向の車線を捉え、車がはみ出さないよう阻止する仕組みだ。フォード広報部によると、車線からはみ出ると警告音が鳴り、ステアリングが震えてドライバーに自覚させる。何度も繰り返すようなら、車が車線内に戻りやすいようステアリングに加減が加わるという。

 2009年以降、同システム搭載車の販売台数は30万台を数える。フォードでは今年初めて「エクスプローラー」や「フュージョン」といった中級車種にも同システム提供を拡大する。「自動車にどの程度まで運転を任せて良いのかと戸惑う顧客も多いが、非常に巧妙にできているので、たいていは気に入られる」(フォード広報部)そうだ。

 一方、メルセデスはフォード同様の車線維持支援システムの他、死角を監視し、運転席から見えにくい側面の他車を感知するシステムも開発している。また、レーダー式センサーによって十分な車間距離を維持し、先行車が急に減速した場合には自動的にブレーキがかかるシステムも採用されている。

■安全の強い味方「通信接続」、スマホが活躍か

 車両のネットワーク接続機能の向上によっても、ドライバーにもたらされる情報が増え、安全強化につながる。

 メルセデスを傘下に収める独ダイムラー(Daimler)のディーター・ツェッチェ(Dieter Zetsche)会長はCESの基調演説で、「車両通信接続は積極的な安全機能だ」と述べた。メルセデス・ベンツのテレマティックスシステム「mbrace2」は、ネット上の情報を検索して路面凍結などの危険性を拾い出し、ドライバーに警告する。

「Edmunds.com」のニューカム氏は、車両ネットワーク接続は今後、大々的に普及するスマートフォン(多機能携帯電話)を通じたものになっていくと予測する。既に自動車メーカー各社は、ダッシュボードの液晶ディスプレーとスマートフォンを同期させている。今は多くの事故を引き起こす原因と非難されている携帯電話が、ゆくゆくは事故防止に役立つときが来るかもしれない。(c)AFP/Charlotte Raab