【10月21日 AFP】5日に死去した米アップル(Apple)の共同創業者、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏(享年56)が、早世の原因となった膵臓(すいぞう)がんの初期段階に手術を拒否していたことを、同氏の伝記の筆者が明らかにした。

 20日に公開された米CBSテレビの情報番組「60ミニッツ(60 Minutes)」からのインタビュー抜粋によると、ジョブズ氏公認の伝記『Steve Jobs』の執筆者、ウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)氏は、ジョブズ氏が膵臓がんの手術を拒否した決断を後悔していたと語った。

 アイザックソン氏によると2004年、ジョブズ氏の膵臓に悪性腫瘍が見つかった際、医師は「非常に進行が遅く、完治できるものだ」と説明した。しかし、ジョブズ氏は、すぐには手術を受けず、食事療法や精神療法など、さまざまな寿命を延ばすための療法を続けた。

 アイザックソン氏によると、ジョブズ氏は、がんの深刻度を軽視しており、周囲の人々には病気は治ったと言いながら、ひそかに治療を続けていたという。

 しかし、じきに皆が「根っこや野菜」ばかり食べるのはやめて、すぐに手術を受けるようジョブズ氏に忠告。結局、がんが見つかってから9か月後、ようやくジョブズ氏は手術を受けた。だが、すでにがんは膵臓の周囲にまで転移していた。

■「体を開けられたくなかった」

 アイザックソン氏がジョブズ氏に手術を拒否した理由を尋ねると、ジョブズ氏は「体を開けられるのがいやだった。そんな風に自分を侵害されたくなかったんだ」と答えたという。

 ジョブス氏は手術を拒んだことを後悔しており、そのことについてアイザックソン氏に話したがったという。アイザックソン氏は、ジョブズ氏は「何かを無視し存在してほしくないと願えば、思考に魔法がおきると考えていたようだ」と述べ、「彼は、早く手術を受ければ良かったと後悔していたと思う」と語った。

 ジョブズ氏は2004年に膵臓がんの手術を、2009年に腎臓移植手術を受けている。

 生前のジョブズ氏に40回以上、インタビューしたアイザックソン氏が出演した「60ミニッツ」は、23日に放映される。

 また、同氏が執筆した全656ページのジョブズ氏の伝記は、24日にサイモン&シュスター(Simon & Schuster)から出版される。(c)AFP

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