【9月19日 AFP】世界最大となる4億8500万人のネット人口を持つ中国で、政府がマイクロブログにおける政府批判の芽を摘む動きを強めている。だが、専門家らは、当局がネット上の群衆を管理しようとすると困難に直面するだろうと予測している。

 中国政府は、これまでも常にネット検閲を行い、政治的に慎重な取り扱いが必要だと見なしたコンテンツは遮断してきた。

 だが2年前に登場したツイッター(Twitter)に似たマイクロブログサービス「新浪微博(Sina Weibo)」は国民の間で爆発的な人気を獲得し、中国政府が検閲を行う上で大きな問題になっている。

 中国政府が厳しく報道を規制している当局者の汚職やスキャンダル、国内の災害や事故への怒りを「微博」への書き込みで発散する市民が急増しているからだ。

 独自の検閲担当者を抱える企業も多く、ネット上で政府に批判的な書き込みを見つけ次第、削除しているが、検閲担当者の目を逃れた政府批判のコメントが、数時間から数日間にわたってネット上に残ることもある。

■2億人が手にした政府批判のツール

「いまや世論はネット上で形成されていく」と、北京大学(Peking University)の胡泳(Hu Yong)教授(ジャーナリズム)は指摘する。

 その一例として胡教授は、発展著しい北東の沿岸都市、大連(Dalian)で8月のある日曜日に行われた、化学工場の移転を求める中流階層の人々による大規模なデモをあげた。このデモのきっかけは「微博」への書き込みだったという。

「大連の党幹部がデモ隊の前に姿を現して工場の閉鎖を約束した。中国で、このようなことは、めったにないだけに象徴的な出来事だ」(胡教授)

 公式統計によると、「微博」のユーザーは2011年上半期で3倍以上に増えた。「微博」を運営する中国ポータルサイト大手「Sina.com(新浪)」も前月、中国最大のマイクロブログ「微博」のユーザーが2億人を超えたと発表している。

■対応を迫られる中国政府

 浙江(Zhejiang)省温州(Wenzhou)で40人の死者を出した7月の高速鉄道事故では、大勢の人々が国を代表する高速鉄道網で安全対策が軽視されたことに対する批判を「微博」に書き込んだ。

 こうした反響の大きさは、当局にとって青天のへきれきだったようだ。事故からまもなく、中国共産党の機関紙、人民日報(People's Daily)は、一般大衆とコミュニケーションをとるため政府高官らはもっと「微博」を利用すべきだとの記事を掲載した。

 香港大学(University of Hong Kong)で中国メディアを研究しているデービッド・バンダースキ(David Bandurski)氏は、当局の「微博」監視は、一定の成果を挙げていると話した。大連でのデモに関する書き込みも、現在は削除されているという。

「デモへの明白な言及や画像を検閲することでソーシャルメディアの影響力は明らかに鈍っている」と言うバンダースキ氏だが、政府から独立した情報源を求めるネットユーザーの欲望が刺激されてしまったいま、政府が「瓶からとび出した魔物」を、再び瓶に閉じ込めることは不可能だと指摘した。(c)AFP/Jonathan Landreth