【9月16日 AFP】あなたが死んだ後、フェイスブック(Facebook)のアカウントや、オンライン上にあるアルバム、iTune(アイチューン)のプレイリスト、ブログやツイートは一体どうなるのだろうか。

 人が死んだ後のオンライン・アカウントのデジタル著作権については、米国その他の国で法律的にはっきりしていない。このためアクセスしたいと思う遺族などにとって複雑な問題になっており、法廷に持ち込まれるケースもある。インターネット上の「クラウド」の中で、誰が何を「所有」しているかは分からないと法律専門家は言う。

■訴訟となるケースも

 オンライン・アルバムの場合「写真の所有者も、著作権を持つのもユーザー本人だが、サイトにアップロードしてしまうと、そこにライセンスの問題が生じる」と、遺産相続計画を専門に扱う弁護士ネーサン・ドーシュ(Nathan Dosch)氏は言う。「オンライン上の資産は本人のものだが、本人が死ぬとアクセス権がなくなってしまう。メールも同じです」

 テキサス工科大学(Texas Tech University)法科大学院のジェリー・バイヤー(Gerry Beyer)教授によると、「デジタル資産」の定義は解釈によって異なる状態が続いている。ポイントはオンライン・アカウントにあるものが、何らかの価値のある「資産」と言えるかどうかだ。場合によっては訴訟となる可能性もある。

「(英歌手)故エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)さんが亡くなる最後の月に書いたツイートは価値があるとあなたが思っているのに、それが消されてしまったらどうでしょう?」とバイヤー教授は問う。さらに、収益を生んでいたブログなど経済的な価値があるアカウントもある。

 また感情的に重要な価値もある。米国では2005年、イラク戦争で死亡した米海兵隊員が持っていたヤフー(Yahoo!)のアカウントについて、個人情報の保護などを盾にアクセスを許さなかったヤフーに対し、遺族が訴訟を起こした。

■「誰も死について考えたがらない、特に自分の死は」

 遺族がデジタル遺産にアクセスする権利について、米国ではオクラホマ(Oklahoma)州とアイダホ(Idaho)州で関連法が通過したが、この分野の法整備のペースは遅い。

 各プロバイダーやSNSの対応はまちまちだ。フェイスブックでは遺族が故人のアカウントを消去したり、「追悼」ページを作ったりすることができる。グーグル(Google)のユーザー同意書では、電子メールサービス「Gメール(Gmail)」の中身を「故人となったユーザーの正式な代理人」に提供する「こともまれにある」と記されている。ヤフーでは、裁判所命令がなければアカウントにはアクセスできない。

 遺産相続計画を専門とするクリストファー・ゲスト(Christopher Guest)弁護士によると、訴訟はまれだが件数は増えている。アクセスを求めた原告が勝訴することが多いが、多大な裁判費用がかかる。「発展途上の法分野です」

 法の空白が存在するところには、新たな商売が生まれる。自分の死後、相続人にアクセスさせたいという人に支援サービスを提供するベンチャー企業も登場している。「あなたのデジタル資産の保存場所を確保します」を宣伝文句にするベンチャー、「レガシー・ロッカー(Legacy Locker)」共同創設者のジェレミー・トーマン(Jeremy Toeman)氏はこう語る。「誰も本当は死ぬことについて考えたくないんだ。特に自分の死についてなんてね」

■ウェブユーザーの高齢化と共に顕在化

 法律専門家は、遺言にデジタル資産の詳細すべてを記すことは勧めていない。遺言は公文書となるため、公開されたその内容が悪用されてなりすまし犯罪を招く可能性があるからだ。

 死後のデジタル資産に関するブログを運営し、共著もあるエバン・キャロル(Evan Carroll)氏とジョン・ロマーノ(John Romano)氏によれば、この問題に対する簡単な答えはない。ロマーノ氏は「この問題はウェブの世界で十分に手入れされていない小さな一角だといえる。デジタル社会を作りたいと望むのであれば、死後のデジタル資産についても対処できるようにする必要がある」と言う。

 前述のドーシュ弁護士は「グーグルにせよ、フェイスブックにせよ、ユーザーが死んだことを確認するようには設計されていない。それにユーザーが多すぎる」と言う。「インターネット・ブームの渦中にいる人びとはまだ若くて気にもせず、自分は不死身だ、という感じだ。ベビーブーマーの間で引退や死に近づく人が増えてくれば、今よりも切迫した問題になるだろう」(c)AFP/Rob Lever