【8月28日 AFP】米アップル(Apple)の最高経営責任者(CEO)を24日付けで辞任した同社の共同創業者スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏(56)は長年、健康状態がすぐれず、過去7年間で2度の大手術を受け、度々休養しては嵐のような憶測を呼んでいた。

 ジョブズ氏は2004年8月、膵臓(すいぞう)がんの手術を受けたことを発表した。膵臓がんは時に診断から2~3か月以内という短期間で亡くなるなど、急死するケースが非常に多いがんだ。ジョブズ氏は翌2005年にカリフォルニア(California)州にあるスタンフォード大(Stanford University)で講演した際、「医師からは、不治のがんであることはほぼ間違いなく、余命3~6か月程度と覚悟するように言われた」と告げ、聴衆をがくぜんとさせた。

 ジョブズ氏はそのまま言葉を続け、「医師には家に帰って身辺を整理するようにと言われた。医師たちが、死ぬ準備をしろと婉曲に言う時の言い方だ。子どもに10年間で教えることすべてをたった数か月で伝え、できる限り家族が困らないようにすべてのことをきちんとしておくということだ。そして、別れを告げるということだ」と述べた。

 膵臓がんのうち95%は、消化に必要な酵素を分泌する外分泌腺と呼ばれる部分にできる。しかし、ジョブズ氏の場合は診断の結果、より良性のもので、がんの場所はインスリンなどのホルモンを分泌する内外分泌腺だった。腫瘍の広がる進行速度は遅く、がんの寛解(かんかい)の指針となる5年後の生存率は非常に高かった。

 2008年には、目で見てはっきり分かるほど体重が落ちた。ジョブズ氏は単にホルモンバランスが崩れたためと説明した。

 2009年には肝臓移植を受けるため、長期にわたって休職した。大手術である上、組織の拒絶反応を抑えるために一生、服薬を続ける必要があり、それが免疫系も抑制するため、日和見感染の可能性を高めるものだった。
 
 そして今年1月17日、ジョブズ氏は「自分の健康のことに専念したい」と言い残して、再び病気療養に入った。

 常に健康状態の詳細については明かしてこなかったジョブズ氏。健康上の現在の問題が肝移植の失敗によるものか、それともがんの転移なのか、あるいは他の問題であるのかは明らかにしていない。(c)AFP

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