【4月18日 AFP】米ホワイトハウス(White House)は15日、単一のオンライン認証サービスを民間主導で開発し、インターネットの信頼性向上やネット事業促進を目指す新たな国家戦略を発表した。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は声明で、「オンライン決済の信頼性とプライバシー保護をより高めることで、犯罪を防止するとともに、企業や消費者に信頼性を提供し、成長とイノベーションを促進する」と述べた。

■1つのIDで全ネット取引を

 新戦略「サイバースペースにおける認証済み身元情報のための国家戦略(National Strategy for Trusted Identities in Cyberspace NSTIC)」は、単一の認証サービスを民間主導で開発し、希望する個人に提供するというもの。

 NSTICが提唱する「アイデンティティー・エコシステム」では、1人が利用する認証(ID)は媒体を問わず1つだけとなり、これまでのように複数のパスワードを覚える必要がなくなる。たとえば、スマートフォン(多機能携帯電話)上で動作するソフトウエアや、スマートカード(ICカード)、デジタルパスワードを生成する認証トークンなどでの利用が考えられている。

「1つのIDでどのウェブサイトにもログインできる。パスワードだけに頼るよりもセキュリティーも高くなる。オンラインバンキングなど慎重を要する決済取引の際には身元証明となり、それ以外の時には匿名で居続けることもできる」と、ホワイトハウスは説明している。

■プライバシー保護強化も重視

 セキュリティー向上と並んで、消費者のプライバシー保護も新戦略では重視されている。

「現在、ウェブを閲覧したりオンラインで決済するたびに、消費者は膨大な情報を収集されている。個人情報の取扱ルールは企業・団体によって違いが大きく、消費者が自分のプライバシーがどのように保護されているのか知るのは難しいことが多い」(ホワイトハウス)

 NSTICは、プライバシー強化のためのポリシー策定や新技術開発を促進して、消費者のプライバシーを保護するエコシステムの形成を促すという。

■「国民ID制度ではない」とネット権利団体

 インターネットのオープン性や革新性、自由さを維持するために活動する権利擁護団体「デモクラシー&テクノロジーセンター(Center for Democracy & TechnologyCDT)」は声明を出し、NSTICは国民ID制度ではないと指摘した。

 CDTのレスリー・ハリス(Leslie Harris)代表は、単一認証は「政府による国民IDの義務化ではない。政府が民間に対して、プライバシー保護を強化した信頼性のあるシステムを導入するよう呼び掛けるものだ」と述べた。(c)AFP/Chris Lefkow