【3月26日 AFP】若い世代がスマートフォンを時計代わりに使うようになるなか、時計産業は消費者を呼び戻すべく、時計のスマート化とハイテク化に日夜励んでいる。

 スイス・バーゼル(Basel)で年1回開催される、世界最大の高級時計と宝飾品の見本市「バーゼルワールド(Baselworld)」。今年は、ダイヤモンドをちりばめ、仕掛けが複雑な各種機械式時計の中で、時計と一体化させたスマートフォンの姿が目立っている。

 Slyde Watchのデザイナー、ファブリス・ゴネ(Fabrice Gonet)氏は、若者たちが携帯電話に頼って腕時計をはめなくなった現実を踏まえ、タッチスクリーン式の電子腕時計を開発した。写真のダウンロードや画面のパーソラナイズも可能だが、電話機能は備わっていないという。

 スイスの高級時計メーカー、ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)は、「世界初、ラグジュアリーなハイブリッド・スマートフォン」と銘打った時計を発売した。機械式時計のローターを携帯電話に組み込んだもので、ローターは外部モーターの役割も果たす。例えばゼンマイを4、5分巻くと、約30秒の通話か短いテキストメッセージの送信が可能になるという。値段は、1万2800ドル(約100万円)から13万ドル(約1050万円)とかなりの高額だ。

 開発に携わったUN Cellsの共同設立者、ボビー・ヤンポルスキ(Bobby Yampolsky)氏は、今後はこのようなハイブリッド電話が成功の鍵を握ると見ている。

「時計には300年以上の歴史がありますが、携帯電話はたかだか30年。携帯電話以前は時計そのものがモバイル(可動)テクノロジーでしたが、それが今やモバイル(携帯)テクノロジーになりました。携帯電話は(時計の市場を)かっさらうことはないでしょうが、その大部分を占めようとしていることは確かです」

 時計を製作した際の哲学も披露した。「ステータスシンボルとは何だろうと考えました。わたしたちは時計も車も持っていますしね・・・(このハイブリッド電話は)言うなればフェラーリ(Ferrari)です。レストランに連れてきて、ダイニングテーブルの上に置くことができる、ね」

■カシオの次世代腕時計

 クォーツテクノロジーの先駆者で機械式時計を絶滅寸前に追いやったカシオ計算機(Casio)は、腕時計の居場所は「まだある」との信念を堅持し、今年はスマートフォンと通信できるG-SHOCKを開発した。

 ブルートゥース(Bluetooth)に対応するスマートフォンがあれば、スマートフォン側の時刻と腕時計の時刻が自動で同期するため、旅行の時も時間を調整する必要がない。

 会議中にスマートフォンが鳴った場合は、時計を軽く叩くと着信音を止めることができる。わざわざ手に持たなくても、バッグに入れたままでできるということになる。また、メールを受信すると、腕時計の表面にその旨のメッセージが表示される。

 同社営業本部長の中村寛(Hiroshi Nakamura)氏は、時計にはまだ大きな可能性があるので、アップル(Apple)のiPhoneが時計の地位を奪い去ることはないだろう、と述べた。

 このG-SHOCKは2011年中に発売の予定だという。(c)AFP/Hui Min Neo

【参考】カシオのプレスリリース
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