【8月3日 AFP】デジタル時代にいかにニューメディア企業を立ち上げればよいか。この指針を示してくれる存在が、米インターネット検索大手グーグル(Google)から独立し、「ハウツーもの」ビデオサイト、ハウキャスト(Howcast Media)を創設したジェイソン・リーブマン(Jason Liebman)氏だ。

 2008年に開設されたハウキャストには、「壁の塗り方」といった元祖ハウツーものから動画投稿サイト、ユーチューブ(YouTube)で 208万回再生された人気を誇る「情熱的なキスの仕方」まで、あらゆるハウツービデオ20万本が集まっている。リーブマン氏個人のお気に入りは、クレイ・アニメーションで説明する「クマの攻撃から生還する方法」と「氷からショット・グラスを作る方法」だ。

 4年間を過ごしたグーグル時代、ユーチューブや動画サイト「Google Video」、Google AdSense(グーグルアドセンス)といったプロジェクトに携わり、ニューズ・コーポレーション(News Corps.)やタイム・ワーナー(Time Warner)、バイアコム(Viacom)といった大手メディアと仕事をした経験が生きているとリーブマン氏は言う。「かれらのビデオ配信の中心は報道やスポーツ、エンターテインメントなどで、どれも制作コストが膨大なわりに一過性で終わってしまう。次世代メディアとしてわれわれが目指したのは、オリジナルでクオリティの高いビデオのライブラリーで、それを異なるプラットフォームへ積極的に配信していくことだ」

 ハウキャストでは月300本の新着ビデオを制作しているが、目標とするのは1万本だ。撮影者に50~300ドル(約4300~2万6000円)の撮影料を払う「新進フィルムメーカープログラム」という独自のシステムで制作するオリジナル・ビデオが大半だ。どんなビデオを作るかはデータから判断している。「視聴者や広告主が求めているものに基づいて決定を下すことが、非常にうまくできるツールをたくさん開発した」

 収益はターゲット広告からあげており、「今年から採算がとれそうだ」と言う。「配信しているビデオのまさしく1本1本に、自然に広告主がいる。例えば『時差ぼけを治す方法』というビデオがあれば、それに乗っかって広告したい航空会社がいるという具合だ」

 ヤフー(Yahoo!)やAOLHuluやマイクロソフト(Microsoft)のMSNブログなど大手ポータルとの提携で、ハウキャストのストリーミング回数は月間2500万件に達している。携帯端末にも革新をもたらしたいとリーブマン氏は言う。「直感的なことだ。ドライブに行って車が壊れても、携帯で修理のハウツー情報を入手できるようになる」

 もうひとつ収益があがっている部門が、DIYチェーンや家電メーカーとの提携ビデオだ。「従来は、製品の説明ビデオや従業員の研修用ビデオを作ろうとしたら、かれらは広告代理店へ行っていた。けれど代理店で作るビデオは秒単価にしたら、映画よりも高い。ハウキャストで作ればはるかに安くすむ」のが売りだ。
 
 多くのビデオ配信会社が生まれてはつぶれているのは承知している。「そうした会社の多くが成功しないのは、ニッチとそれに適したビジネスモデルを見つけることができないからだ。わが社はこの業界のカギを解くことができて嬉しいよ」(c)AFP/Chris Lefkow