【7月10日 AFP】中国政府は6月末で期限が切れた米インターネット検索最大手のグーグル(Google)のインターネット事業免許を更新した。専門家の間では、インターネット事業に政治的に介入する大国と、世界のIT業界の巨人が共にメンツを保って決定的な決裂を避けるための妥協点だったとの指摘がある。

 グーグルは9日、中国におけるインターネット事業免許が更新されたと発表した。これまで中国政府の検閲にグーグルが反発、また中国国内から組織的なサイバー攻撃を受けたと主張するなど、両者の確執からここ1週間、中国国内での事業免許更新をめぐる緊張が高まっていた。

「大きな驚きとは言えない。駆け引きの先には、大きな衝突を避けたいという中国側の思惑があったと考えている」と分析するのは、米シンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)」のサイバーセキュリティの専門家、ジェームズ・ルイス(James Lewis)氏だ。中国は「胡錦濤(Hu Jintao)国家主席の訪米を前にグーグル問題をこじらせて、2国間協議の議題を変更するのは避けたかったはずだ」

 事業免許更新を前にグーグルは中国版サイトを検閲のない香港(Hong Kong)のサイトへ自動転送(リダイレクト)するのを中止した。現在は、同社の中国の検索サイト「www.google.cn」には香港版へのリンクが表示されており、ユーザーがクリックするようになっている。

■当面は「休戦」でも中国の長期的問題は残る

 ルイス氏は「折に触れてメンツを保つために何かをするのは好ましい。すべての人にとって数か月の時間の猶予ができた。グーグルにとっても、中国にとっても都合がよい」と説明する。

 しかし前年、中国国内からサイバー攻撃を仕掛けられていることへの対抗措置として、グーグルが検索結果の検閲を行わないと決めたことに対して、中国政府は「いまも不満を感じている」と言う。

 また、たとえグーグルと中国政府が短期的な休戦状態に至ったのだとしても、中国には「長期的な問題」があると言う。それは「中国はテクノロジーが好きで、世界の情報インフラにアクセスするのも好きなのに、テクノロジーが政治に影響を与えるのを嫌っている」ことだ。(c)AFP/Chris Lefkow