【4月7日 AFP】あなたが外国のとある都市で高層ビルに目を止めた時、そのビルの最上階にある高級バーの電話番号が耳元でささやかれたとしたらどうだろうか。あるいは、道で旧友にばったり出会ったがどうしても名前を思い出せない時、握手をするまでのわずかな時間に、相手のプロフィールや最後に会った日付が携帯電話に表示されたら。このような世界が近づいているのかもしれない。

 拡張現実(オーグメンテッド・リアリティー、Augmented Reality、AR)の世界へようこそ。ここはバーチャル技術やインタラクティブ(双方向)技術によって日常の生活が拡張される世界だ。

 新しい視線追跡ツールを応用したARアプリケーションの試作品が、フランスのスキーリゾート、ムジェーブ(Megeve)で今月2~3日に開催された第1回「Augmented Human International Conference」で発表された。

 目の動きを捕捉する装置は、パイロットからデータを収集して航空機のコクピットデザインを向上させるため、1940年代に初めて開発された。こうした装置はまた、広告を効果的に人びとに見せるための研究にも活用された。

 最近の視線追跡システムは双方向的となり、人間が見ているものに関する情報をコンピューターで即時に提示できるようになっている。こうした技術は主に軍事面で利用されているほか、身体が不自由な人の支援用にも開発が進んでいる。

■ハイテクが実現する「第6感」

 オーストリアのTelecommunications Research Center ViennaFTW)の研究チームは、インターネットを使った分析向けの最新の視線追跡システムを、街頭で実際に利用することを決定した。

 この装置は、2つのカメラを装備し、1つは利用者の目の動きをとらえ、もう1つは視線の先にある物体を捕捉する。利用者の位置情報を得るためのコンパスやGPS(衛星利用測位システム)を内蔵し、多機能携帯電話に接続して利用する。

 利用者が上を向いているか、下を向いているのかを確認するためのセンサーも取り付けられている。都市情報のナビ機能を搭載した

 視線の中の建物や橋、建造物などに関する情報を知りたい場合は、目を2秒間閉じるのだという。装置から遠く離れた場所にあるコンピューターが、グーグル・アース(Google Earth)のようなインターネット上の地理情報データベースを検索し、利用者の携帯電話に結果を送信する。

 研究者の1人は、「このシステムを可能な限り煩わしいものにしたくはないと思い、テキストを音声に変換するソフトを採用して、イヤホンで情報を提供している。第6感のような存在であってほしいんだ」と語った。(c)AFP/Marlowe Hood