【3月28日 AFP】米カンザス(Kansas)州の街が「グーグル市」を名乗ったかと思えば、ボルティモア(Baltimore)では「グーグルの皇帝」が選任され、全米各地の市町村がこぞって「グーグルの日」を祝った--米検索大手グーグル(Google)による高速ネット事業の試験サービスを誘致しようと、100をゆうに超える全米の自治体が沸いている。

 グーグルのライバルであるソフトウエア大手マイクロソフト(Microsoft)のお膝元、ワシントン(Washington)州シアトル(Seattle)でさえも、既存のインターネットの100倍のスピードという高速の試験サービス、「Google Fiber(グーグル・ファイバー)」を呼び込もうと身を乗り出している。

 前週26日は、このサービスの試験運用地域の募集締め切りだった。西海岸のオレゴン(Oregon)州ポートランド(Portland)から東海岸のメーン(Maine)州のポートランドまで、全米の自治体がこぞって申し込みに殺到した。

 グーグルは2月、毎秒1ギガビットの家庭用高速光ファイバー通信の通信網を1か所ないし複数の地域に構築する計画を明らかにした。利用者は5万人から、多ければ50万人を見込んでいる。提供地域は年内に発表される。

■突飛なアイデアが続出した招致合戦

 この計画発表の早々から思い切った賭けに出て耳目を集めようとしたのが、カンザス州の州都トピカ(Topeka)だ。3月の1か月間、市名ごと「カンザス州グーグル市」に変えて「光ファイバーの首都」を名乗り出た。

 トピカに匹敵する奇抜なアイデアをひねり出したのは、ミネソタ(Duluth)州ダルース(Duluth)のドン・ネス(Don Ness)市長だ。グーグルの人気動画共有サイト・ユーチューブ(YouTube)に、「今後、わが市で生まれる長男は全員『グーグル・ファイバー(Google Fiber)』、長女は『グーグレット・ファイバー(Googlette Fiber)』と名づける」というジョーク広告を投稿。おまけに別のビデオでは市を売り込むために、自らTシャツ、短パン姿で凍るスペリオール(Superior)湖に飛び込み、ほかの市長もグーグル・ファイバーを誘致したかったら「スペリオール湖に飛び込みに来い」と挑戦状を叩きつけた。

【参考】ドン・ネス市長の長女長男広告(YouTube)
【参考】ドン・ネス市長の湖ダイビング(YouTube)

 グーグルの気を引こうと売り言葉を買ったのは、フロリダ(Florida)州サラソタ(Sarasota)市のディック・クラップ(Dick Clapp)市長だが、氷の湖とは遠い陽気なフロリダ・スタイルでスキューバ・ギアに身を固め、サメだらけの水槽に飛び込んだ。サラソタも街の一部を「グーグル・アイランド」と改名、「グーグル・アイランド・ネット(GoogleIsland.net)」を開設し、「街に高速ブロードバンドがやって来たら」という誘致ソングも用意した。

【参考】GoogleIsland.net

 ボルティモアでは地元のテクノロジー実業家、トム・ラブランド(Tom Loveland)氏が、誘致事業の先頭に立つ「グーグルの皇帝」に選任された。ほかの都市同様ボルティモアも、自前のウェブサイトからユーチューブ、フェースブック(Facebook)、ツイッター(Twitter)とオンライン発信を駆使して、IT通ぶりを見せつけようとした。

 このほか招致合戦に加わったのは、オハイオ(Ohio)州シンシナティ(Cincinnati)、インディアナ(Indiana)州インディアナポリス(Indianapolis)、テネシー(Tennessee)州メンフィス(Memphis)、ウィスコンシン(Wisconsin)州ミルウォーキー(Milwaukee)、ルイジアナ(Louisiana)州ニューオーリンズ(New Orleans)、ペンシルベニア(Pennsylvania)州フィラデルフィア(Philadelphia)、同州ピッツバーグ(Pittsburgh)、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)、ワシントンD.C.(Washington D.C.)などだ。

 しかし、これだけ多くの大都市が名乗りを挙げても、最終的に選ばれるのは小さな自治体かもしれない。グーグルは計画発表にあたり、「通信サービスがまったくないところや取り残された地域」を優先すると宣言している。(c)AFP/Chris Lefkow