【3月3日 AFP】電車やバスで、隣の人が携帯電話に向かって大声でしゃべっている――。大半の人々に起こるようなそんな経験も、2日にドイツ・ハノーバー(Hanover)で開幕した世界最大の情報技術見本市「CeBIT」でお披露目された新技術のおかげで、まもなく過去のものになるかもしれない。

 ドイツのカールスルーエ技術研究所(Karlsruhe Institute of TechnologyKIT)が開発した携帯電話、その名も「サイレント・サウンズ(silent sounds)」は、筋電図検査を応用して話者の唇の動きを監視し、これらを電気パルスに変換してコンピューター音声に合成するというもの。言葉を発しなくても、受話器の向こうの相手に伝えることができる。

 現行では電極を皮膚に張って使用するが、将来的には電極を携帯電話に内蔵することも可能になるという。
 
 この技術によって、病気や事故で声を失った人々を手助けしたり、読唇術をもった人が周囲にいなければ、盗聴されることなく信頼できる友人に電話で暗証番号を伝えられるといった、さまざまなアプリケーションの開発が可能になる。

「サイレント・サウンズ」技術を使えば、多言語話者になることもできる。電気パルスは万国共通であることから、ユーザーの選択した言語に即座に変換できるのだ。カールスルーエ技術研究所のミハエル・ワント(Michael Wand)氏によると、「あたかも話者が外国語を話しているかのように、話者が音を発さずに自分の言語で文章を話すと、受け手は受け手側の言語に訳された文章を聞くことができる」のだという。

 この技術は、英語や仏語、独語などに有効だが、中国語など声調の違いによって意味の異なる言語には難しいという。

 また、「オフィスにいるやかましい人」対策のため、オフィス環境向けの技術も開発中だという。 

 現在開発されているデバイスの効率性は99パーセントで、受話側のコンピューター音声は100語に1語の割合で間違えて生成されるが、ワント氏によると技術的な課題は克服されつつあり、5~10年以内には実用化される見込みだという。(c)AFP