【2月13日 AFP】中国で女性誌の編集者を務めるシシー・ディン(Cissy Ding)さんは、最近になってついに中国で大流行している中国版マイクロブログサービス「Weibo」に登録した。「Weibo」を始めなければ、世間から取り残されると感じたからだという。

 世界最大の3億8400万のネット人口を持つ中国では、国内のソーシャルネットワーキングサイト(SNS)がブームとなっている。当局の検閲に苦慮している「フェースブック(Facebook)」「ツイッター(Twitter)」、グーグル(Google)が所有する「ユーチューブ(YouTube)」などの海外サイトを尻目に、国内の動画共有サイト「Youku」や「QQ」の利用者は爆発的に増えている。

■「政府は制御しやすい国内サイトを育てようとしている」

 SNSやマイクロブログが大勢の人びとを動員する手段に用いられることを危惧(きぐ)する当局が、「ツイッター」などの外国サイトへのアクセスを度々、遮断していることも、中国のユーザーが国内サイトに向かう一因とみられている。

「中国政府は意図的に海外サイトよりも制御しやすい国内ネットの事業者を育てようとしている」と、中国のニュースサイト「チャイナ・デジタル・タイムズ(China Digital Times)」の蕭強(Xiao Qiang)編集長はいう。「これは中国の検閲体制の重要な要素だが、世界最大の中国ネット市場に参入したい外国企業にとっては貿易障壁となっている」

 昨年7月、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)での暴動の拡大を恐れた中国政府は国内での「フェースブック」や「ツイッター」アクセスを遮断。前月には、インターネット検索大手グーグルが、サイバー攻撃や当局による検閲を理由に中国版サイトからの撤退する考えを示し、米中間でのインターネット上の自由に関する論争にまで発展した。

■「言葉」の問題もネックに

 一方、海外ネット業者が中国で成功できない理由は、単純に中国人ユーザー仕様でないからだと指摘するアナリストも少なくない。

「たとえ『フェースブック』や『ユーチューブ』がアクセスを遮断されなかったとしても、中国版SNS『開心(Kaixin)』や『Youku』などの中国陣との競合は難しかっただろう」と、安邦集団(Anbound)のITアナリスト、ドゥアン・ホンビン(Duan Hongbin)氏はいう。「中国検索大手『百度(Baidu)』と中国版グーグルを比べれば、技術面やブランド知名度ではグーグルの方が上だ。だが、それでも中国人のほとんどが『百度』を好んで使っている」(同氏)。その理由は愛国心とよりも言葉の問題だという。中国人ネットユーザーの多くは英語に慣れていないからだ。

 こうした事情を背景に「Youku」は2009年の業績を前年比5倍となる2億元(約26億円)に伸ばした。

■目的で内外サイトを使い分けるユーザーも

 若者向け情報には国内サイトのQQを利用し、海外情報を知りたい時にはMSNサイトを参照するなど、内外ネットを使いこなすユーザーも珍しくないという。
 
 編集者のディンさんが良い例だ。ディンさんは、Weiboで自分の考えを書き込んだり有識者や人気スターのブログを読んだりしているが、友人や同僚とのチャットにはMSNを利用しているという。(c)AFP/Francois Bougon