【11月9日 AFP】米国や欧州連合(EU)の調査によると、企業がオンライン追跡を使い、インターネット・ユーザーの趣向を把握して個人個人の関心にあわせた広告を送信する手法に、消費者の間で懸念が高まっているが、こうしたなか、オンライン追跡に規制を求める動きが欧州を中心に高まっている。

 スペイン・マドリード(Madrid)で6日まで、3日間にわたって開催されたインターネット上のプライバシーに関する会議で、オンライン追跡は中心的な議題となった。

 現在では企業は常に、自社製品の購入者に関する個人情報を収集しているが、以前は個人情報の取得は雑誌購読や保証書登録などを通じたものに限られていた。

 しかし、今はこうした情報源となるサイトは、出会い系から新聞社のホームページまで、あらゆる分野に拡大しており、多くの場合はユーザーが気付かないまま、データベースにすさまじい速度で個人情報が流れ込んでいる。これによって企業は、いまだかつてなく詳細な顧客プロフィールを作成できるようになっている。

 欧州評議会(Council of Europe)の法制改革担当局を率いるJorg Polakiewicz氏は、「ネット広告には多くのグレーゾーンがある。ユーザーがその実態を知れば、大きな衝撃を受けるだろう」と話す。

 同局では、加盟47か国におけるプライバシー権の保護強化を目指し、オンライン追跡による消費者のプロファイリングに新たな法的枠組みを定めようとしている。現時点でこうした法規制がある加盟国はほとんどないという。

■欧米で同時に高まる懸念

 米国では9月、技術・通信分野を扱う米上院の小委員会で、一般に「行動ターゲティング広告」と呼ばれるこの広告手法にプライバシー保護規制を導入したい意向を委員長が表明した。

 カリフォルニア大(University of California)とペンシルベニア大(University of Pennsylvania)が前月発表した調査では、米国人の3分の2がこうしたターゲット広告に拒否感を持っていることが明らかになっている。

 欧州委員会(European Commission)が4月に実施した調査でも、EU域内の60%の住民が、個人情報の商業利用に懸念を持っていることが示された。欧州消費者同盟(BEUC)のウィリーマイン・バックス(Willemien Bax)氏は、「消費者自身が自分の個人情報を厳格に管理できているかどうかは非常に重要。自分のプロフィールが勝手に構築されているのにそれを見ることができないのは大問題だ」と語る。

 大企業のなかには、自社のオンライン追跡を制限し、こうした懸念に対応を試みるところもある。例えば、大手家庭日用品メーカー、プロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)では、個人情報の入力に同意した消費者向けに、それによってどのような広告が送られたり、どのような割引が受けられるかといったことを例示するページを設けている。

 しかし、米消費者団体「デジタル・デモクラシー・センター(Center for Digital Democracy)」の創設者ジェフリー・チェスター(Jeffrey Chester)氏は、企業が自主的に行う規制では不十分で根本的な解決とはならないと述べ、より厳しい法規制による消費者保護が必要だと指摘している。(c)AFP/Daniel Silva