【10月22日 AFP】米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)のロバート・トムソン(Robert Thomson)編集長が21日、米インターネット検索大手グーグル(Google)に対し、インターネットでのニュース購読を「フリーセックス化している」とかみついた。米サンフランシスコ(San Francisco)で開催中の「「Web 2.0サミット(Web 2.0 Summit)」でのことだ。

 インターネット業界の巨人グーグルに対するトムソン編集長の実もふたもない批判は、オンラインでのニュース集約サービスにおける報道の将来をテーマとした公開討論で、グーグルのマリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)副社長に直接向けられた。「マリッサは無意識にニュースのフリーセックス化を進めている」

 ユーザーの検索による結果、さまざまなニュースへのリンクを提供しているグーグルが、従来のニュース配信にとって得となっているのか、損となっているのかが論点だった。

 トムソン氏は痛烈な批判を続けた。「サービスモデルまるごと、デジタル化による背信行為だ。ユーザーが『ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)』と打ち込んだとして、それで表示される結果に、ニュースサイトに誘導しようという意図はまったくみられない」

 これに対しメイヤー副社長は、グーグルが意図するところは、広告収入を生めるニュースサイトにユーザーを誘導することだと反論した。

「ジャーナリズムは現在、過渡期の真っ只中。われわれが出版業界の助けになっている点もたくさんある。グーグルでは出版業界に年間50億ドル(約4580億円)以上も支払い『理想的に金銭化できる』トラフィックを生んでいる」。メイヤー氏はさらに、新聞社が自社の記事を表示されたくなければ、グーグルの一覧に表示させないツールもあると突き放した。

■集約サービスは上澄みをすくっているだけか?

 しかし、トムソン氏はさらに、オンライン上に発表された調査記事や報道記事と、グーグルのように他者の仕事を集約しただけのものの違いを強調し、例えば危険地帯からの報道に必要な特派員の派遣代など、「現時点では大半の負担は発信源のほうが負っている」と応じた。「グーグルや(オンライン・ニュースサイトの)ハフィントン・ポスト(Huffington Post)のやっていることは巧妙だが、それは『創造』ではない。少々工夫した『おうむ返し』だ」

 槍玉にあがったハフィントン・ポストのエリック・ヒッポー(Eric Hippeau)最高責任者(CEO)はトムソン氏に「あなたがそうもグーグルを嫌うわけが分からない。オンライン出版はグーグルのおかげでこんなに巨大な流通を生んでいる」とグーグルを擁護した。

 さらにWSJと同じ「古い」出版界の代表格、米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙のデジタル部門担当副社長マーティン・ニーゼンホルツ(Martin Nisenholtz)氏も、同紙の売り上げはここ数年変わっていないと述べ、インターネットによって紙媒体の新聞は消えるというのは「決まり文句なだけだ」と討論をなだめた。

 さらにニーゼンホルツ氏は報道機関にとってはチャンスだと主張し、「ウェブによって得るものも失うものもある。『止めてくれ』というだけならば、インターネットに押し倒されてしまうだろう。自分たちなりの方法で革新を遂げていかねばならない」と強調した。

 ハフィントン・ポストのヒッポー氏は、今後ますます多くの人がオンライン・ニュースを求めるようになり、それはジャーナリストにとって新たな機会を生むだろうと予測した。「われわれはジャーナリズムの黄金時代にいる。それをありがたく生かそうではないか」(c)AFP/Glenn Chapman