【7月11日 AFP】フランスの主要経済紙トリビューヌ(La Tribune)が、記者の削減を図り、自動翻訳によるウェブサイトの各国語版を公開したものの、滑稽な翻訳文を次々と掲載して話題になっている。

 トリビューヌ紙のウェブサイトでは今週、格安航空会社ライアンエア(Ryanair)の「立ち乗り席」導入の記事に「Ryanair loan to make travel of the passengers upright(ライアンエア、直立乗客の旅行をつくるためにローン)」との奇妙な見出しが掲載された。

 試験段階中の同サイトには、この日ほかにも「The Chinese car in ambush(待ち伏せする中国自動車)」「Internet Explorer: mistrust!(インターネット・エクスプローラー、不信!)」や「Assets of the continental right in management of the crisis(危機のマネジメントにおける大陸的権利の資産)」といった謎めいた見出しが続出した。

 しかし、トリビューヌ紙編集長は、この自動翻訳ソフトを改良し、文章を訂正する従業員を雇用すれば、世界中の潜在的読者がトリビューヌ紙を読めるようになると確信しているのだという。トリビューヌ紙はフランスの経済紙で売り上げ2位の主要紙だ。

 同紙のニューメディア部門責任者のAstrid Arbey氏は、「インターネット上の公衆を新規獲得するため、ビジネスニュースを多言語で提供することが目的だ」と語る。

 このプロジェクトは、コンピューターソフトを利用して、フランス語のウェブサイトをリアルタイムで英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語に翻訳するというもので、日本語版と中国語版も年末までに公開する計画。

 トリビューヌ紙では、現在、1人のスタッフが外国語部門を担当している。近日、英語記事を訂正するために新たにもう1人雇用する予定だという。

 この計画の方針について、前年に同紙を買収したメディア起業家Alain Weill氏の典型的なやり口だ、と語る記者もいる。

 ある記者は、「(外国語サイトは)ジャーナリストが介在しておらず、品質はまさに2流だ」と述べ、「(このサイトは)トリビューヌ紙のイメージを壊すものだ」と語る。トリビューヌ紙は、フランス国内では銀行、金融、経済関係者向けのまじめな新聞という評価を獲得している。

 また、同記者によると、フランスのほかの新聞社は自動翻訳を使用していない。それは自動翻訳が「ジャーナリズムでは機能しない」ことを知っているからだという。

 しかし、ニューメディア部門責任者のArbey氏は、現在進められているソフトウエアの改良と、今後予定されている校正者1人の雇用によって、ちゃんとした翻訳文が提供されることになると信じているのだという。

 ライアンエアの記事を英語に翻訳した記事の最後は、以下のように締めくくられている。これで本当に大丈夫なのだろうか?

「ライアンエアは、挑発をもう一度やってみせる。支払いトイレの次は、ある人最大の乗客への付加税、ライアンエアは旅行を同社の乗客の直立姿勢の一部にする計画だ!」

(c)AFP/Rory Mulholland