【6月1日 AFP】フランスの物理学者のチームが31日、ハードディスクのデータの保存・検索を、現在のディスクの最高10万倍まで早くできる超高速レーザーを使用したことを明らかにした。チームでは次世代のIT技術への橋渡しとなると期待している。

 1990年代半ばに小型記憶媒体に革命をもたらし、2007年にノーベル物理学賞を受賞したフランスのアルベール・フェール(Albert Fert)、ドイツのペーター・グリュンベルク(Peter Gruenberg)両氏の研究に基づき、さらに発展させたのが今回の研究だ。

 2人は微少な磁場の変化で、電気抵抗が大きく変わる磁気抵抗効果を発見した。この変化によって、ハードディスクの読み取りヘッド部に電流が発生する。この発見は、各原子の電荷だけではなく電子の回転も利用する新しい電子技術のひとつで、より小型で保存容量の大きいハードドライブを生産できる技術、「スピントロニクス」への道を開いたといわれる。

 しかし、「スピントロニクス」ではこれまで磁気センサーの反応が比較的遅く、データの読み取りや書き込みができなかった。
 
 仏ストラスブール材料物理化学研究所(Strasbourg Institute of Physics and Chemistry of Materials)のジャン・イブ・ビゴ(Jean-Yves Bigot)氏率いるチームが、英科学誌「ネーチャー・フィジックス(Nature Physics)」(電子版)に発表した論文よると、同チームが使用したのは、1000兆分の1秒だけ発光することで電子の回転を変え、検索・保存の速度を飛躍的に高めることができる「フェムト秒レーザー」と呼ばれる光レーザー。

 ビゴ氏はAFPの取材に対し「われわれの手法は、光子(フォトン)によって、記憶媒体の表面にある電子の磁化状態に変更を加えるもので『フォトニクス』と呼ばれる」と語った。現在のところ「フェムト秒レーザー」の大きさは30×10センチ程度で、家庭用電子機器などでの使用にはまだ大きすぎるが、ビゴ氏は今後10年程度で小型化が実現するだろうとみている。

 ビゴ氏によると、日立(Hitachi)や米IBMなどが、研究に「非常に強い関心」を示しているという。(c)AFP