【4月28日 AFP】チェスの世界チャンピオンを破るコンピューターを作り上げた米コンピューター大手IBMが、今度はクイズ番組に挑戦すべく新たなコンピューターを開発している。

 IBMが27日、過去2年近くにわたり開発してきたことを発表したこの新コンピューターのコード名は「ワトソン(Watson)」。シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)の相棒ではなく、IBM創始者のトーマス・ワトソン(Thomas Watson)氏にちなんで名付けられた。

 この「ワトソン」が目指すのは、米国の人気クイズ番組『ジョパディ!(Jeopardy!)』への出演。この番組は、歴史、文学、政治、映画、ポップカルチャー、科学の6分野のクイズに、出場者がヒントをもとに答えるという内容だ。

 IBMによれば、ヒントから「微妙なニュアンスや皮肉、謎かけといった複雑さを分析する」必要があるため、『ジョパディ!』はコンピューターには手ごわい挑戦となるという。

 IBMのサミュエル・パルミサーノ(Samuel Palmisano)会長は「決断ということの本質を煮詰めれば、それは膨大な量のデータからパターンを識別し、選択肢をより分け、迅速に正確に答えることだ。『ワトソン』はこれらすべてを数秒間で行えるように設計する。1秒足らずで物事を認識する能力のある人間とも対戦できるようになるだろう」と自信を見せた。

■質問応答技術の進歩から人間との共同作業を追求

 IBMは1997年、「ディープ・ブルー(Deep Blue)」と名付けたコンピューターで、当時のチェス世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ(Garry Kasparov)氏を破った。しかし「ワトソン」の開発は、さらに困難な挑戦となりそうだ。

「ワトソン」プロジェクトのチームリーダー、David Ferrucci氏は「問題は、自然な言葉で出題されるクイズに対し何が正確な答えか決定し、その答えに持てる自信を正確に算出するという人間の能力に匹敵できるシステムを開発することだ」と語った。

 同氏によれば、この確信度を判断する能力がカギで、従来の研究とは一線を画す。この確信度算出はビジネス向けの質問応答ソフトの開発などに必須な機能だという。「これまでコンピューターには不可能とされてきた、人間との言葉を通じた協力作業を可能にする知的計算システム構築において、ワトソンを可能にする質問応答技術の進歩は重要な意味を持ってくるだろう」(c)AFP