【3月29日 AFP】米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は28日、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世のコンピューターなど103か国の政府や個人のコンピューターが、中国を主な拠点とする電子スパイ活動により侵入を受けていたと伝えた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、カナダの研究チームが今週末に発表する報告書の内容として、このスパイ・システムのほぼすべての操作が中国国内のコンピューターから行われていたと伝えた。しかし、中国政府が関与したかどうかについては断定ができないとした。

 この調査は、ダライ・ラマの事務所のコンピューターに悪意のあるソフトウエアの兆候があるとして、同事務所がカナダのトロント大学(University of Toronto)のムンク国際研究センター(Munk Center for International Studies)の専門家らに調査を依頼したことをきっかけに始まった。

 その結果、103か国1295台のコンピューターが不正アクセスを受けた大規模なスパイ活動が明らかになった。

 侵入を受けたコンピューターの多くは大使館や外務省、各国政府施設のもので、インド、ベルギーのブリュッセル(Brussels)、ロンドン(London)、ニューヨーク(New York)にあるチベット亡命政府の事務所も侵入を受けていた。

 研究者らが「ゴーストネット(GhostNet)」と呼ぶこのスパイシステムは、ダライ・ラマに対するスパイのほかに、東アジアと東南アジア諸国の政府機関を標的にしていたという。ニューヨーク・タイムズは、これまでで最多の国が侵入を受けたスパイ活動だと述べた。

 報告書によると、現在も、1週間につき十数台以上のコンピューターが新たに侵入を受け、監視されているという。

 米国政府の関連施設が侵入を受けた形跡は無かったが、北大西洋条約機構(NATO)のコンピューターが半日にわたって監視され、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるインド大使館のコンピューターが侵入を受けていた。(c)AFP