【8月13日 AFP】インターネットのユーザーがあるサイトにアクセスしようとするとき、URLをわずかに打ち間違えることがある。こうした打ち間違え(タイポ)を悪用する「タイポ・スクワッティング」と呼ばれる犯罪が、インターネット上の選挙活動に便乗して行われる可能性を、米国のセキュリティー専門家が指摘している。

 ある候補者のサイトによく似たドメイン名を無関係の人間が占有し、タイプミスしたユーザーを偽サイトに誘導してその候補者を中傷する内容の情報を与えるなどの妨害活動に利用する危険があるというのだ。

■オバマ、クリントン両氏の名前に酷似のサイトも

 2-7日に米ラスベガス(Las Vegas)で開催されたセキュリティー国際会議ブラックハット(Black Hat)で、セキュリティー対策ソフト大手、シマンテック(Symantec)のOliver Friedrichs氏は、「将来は選挙戦でタイポ・スクワッティングを妨害活動に利用するのは当たり前のことになるだろう。タイポ・スクワッティングを選挙で悪用する過激派や金もうけを企む犯罪者が、増加するのは確実だ」と述べ、選挙陣営はこの種の攻撃をもっと知る必要があると訴えた。
 
 シマンテックが今年2月に行った調査によると、民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員のウェブサイト「www.barackobama.com」とスペルが酷似したサイト160件のうち、47件がタイポ・スクワッティングの手口を使っていたことが判明したという。その1つ「hillaryclingon.com」では、民主党のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員やほかの候補者を、米人気SFドラマ『スタートレック(Star Trek)』の登場人物になぞらえて揶揄(やゆ)していた。

 また、ある候補者が選挙から撤退するとの偽の発表や、実際には存在しないスキャンダルを報じるものもある。米大統領選から撤退したある候補者は、動物を殺しているとして非難されていた。

■知らないうちに寄付金が対立候補に

 タイポ・スクワッティングのサイトに訪れた人々のコンピューターには、知らないうちに有害ソフトウエアがインストールされ、移動を追跡されたり、さらにはコンピューターを制御されてしまうこともある。本物の選挙サイトにそっくりなサイトを作成し、そこで寄付金をだまし取ったり、被害者のクレジットカードの情報を悪用することも可能だ。オンラインで行った寄付が、いつのまにか対立候補に流れている場合もあるという。

 タイポ・スクワッティングのサイトの所有者は、本物とよく似た電子メールアドレスに送られたメールを妨害し、別のアドレスに送信させることもできる。演説の原稿や寄稿文、また戦略のメモなどが書かれた電子メールが、タイプミスが原因で送信妨害される可能性もあるという。「この問題は深刻で、選挙陣営だけでなく電子メールを用いる全企業にも及ぶ」とFriedrichs氏は警鐘を鳴らす。

 さらに脅威的な事実も判明している。シマンテックが防衛専門企業のサイトを調べた結果、インドと中国のサイトに導かれるタイポ・スクワッティングが1つずつ、見つかっているという。(c)AFP/Glenn Chapman