【3月11日 AFP】「気にしないよ。どうせみんないつかは死ぬんだから」―ドイツ中部ハノーバー(Hanover)で開催された世界最大の情報技術見本市「CeBIT」の会場でビデオゲームをしながらクリスチャン(Christian、17)が言うと、友人たちは一斉に笑った。

 彼らが気にしないと言っているのは、ゲーム機が環境に与える負荷のことだ。米IBMやドイツ大手電気通信事業者ドイツテレコム(Deutsche Telekom)のように環境に対する貢献実績を懸命にアピールする企業もあるが、ゲーム業界には緑を愛する人はいないようだ。

■航空業界を上回るCO2排出量

 世界最大のソフトウエア会社、米マイクロソフト(Microsoft)は環境のための取り組みを同見本市で宣伝したが、その中で「Xbox 360」について触れることは1度もなかった。

 世界中のコンピューターを動かすためには発電所14か所分に相当するエネルギーが必要で、これに伴い排出される二酸化炭素(CO2)量は航空業界全体の排出量を上回るという。

 そんなコンピューター業界内でとりわけゲーム機は、スリリングな映像と音声を演出するために大量のエネルギーを消費する。オンラインでプレイすればエネルギー消費量はさらに増える。

 さらにゲーム機の世代交代により、発展途上の業界の宿命として、大量のゲーム機や付属品が廃棄される。

■高まらない業界の環境意識

 このような状況を国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)が見過ごすはずがない。今回初めてCeBITに参加した同団体は、主要14ブランドの37製品について調査した環境への貢献度を発表した。それによると、危険物質、エネルギー効率、リサイクルについては若干の改善がみられたという。

 ただ、任天堂(Nintendo)が「Wii(ウィー)」に関する情報を提供しなかったほか、マイクロソフトは情報がないと回答、ソニー(Sony)の「プレイステーション3(PlayStation 3PS3)」に関する情報提供は非常に遅く不十分だったという。各社にマイクロチップを提供するIBMも、他分野での環境への取り組みについては熱心に話す一方、ゲーム機についてはゲーム各社に聞くようにとの態度を取ったという。

 このような背景とは無関係に、CeBIT会場でのゲームは続く。

「そんなことでゲームをやめようなんて思わない。ゲームをするときに考えることなんて、どれだけおもしろいかどうかだけだから。ゲームをする人の多くは、本気で環境のことなんか考えない」と兵士でゲームマニアのセバスチャン(Sebastian、22)は語る。

 オランダ出身のゲルド(Geld、17)は必死にコントローラーのボタンを押しながら「コンピューターより洗濯機のほうがたくさんエネルギーを使うだろ」と反論した。(c)AFP/Simon Sturdee