【2月14日 AFP】ソニー(Sony)の「プレイステーション3(PlayStation 3PS3)」などのゲーム機が、低価格のスーパーコンピューターに改造され、医学や天文学などさまざまな分野の研究に利用されている。その実例に関する報告が、16日の英科学誌ニュー・サイエンティスト(New Scientist)に掲載される。

 PS3に使われているセル半導体は、化学者や物理学者によって活用されている。このセル半導体はソニー、東芝(Toshiba)が製造したもので、中央演算処理装置(CPU)1台とスレーブプロセッサ8台を搭載しており、オープンアクセスの基本ソフト、リナックス(Linux)上で動かすことができる。ゲームのための高品質の画像を作り出すために要求される演算は、分子レベルから天文学的レベルに至るまでの粒子間の反応をシミュレートするのに必要な演算と類似しているのだという。

 また、同誌によると、マサチューセッツ大学(University of Massachusetts)の宇宙物理学者Gaurav Khanna氏は16台のPS3をつなぎ合わせ、2つのブラックホールが衝突する際に発生する重力波をシミュレートしている。

 米大手半導体メーカーNVIDIAは、パソコンでのゲーム画像の質を向上させるため、PS3をグラフィック処理装置に改造した。

 イリノイ大学(University of Illinois)の化学者トッド・マルチネス(Todd Martinez)氏は、Cプログラミング言語を使ってセル半導体を動かすことで、通常のパソコンより演算を130倍速く行うことができることを発見した。

 このほか、任天堂(Nintendo)の家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」のリモコンも、動かされた方向や大きさを読み取ることのできる加速度計を含んでいることから、医療業界で利用されている。外科医らが手術技術を向上させるために利用しているほか、神経科医が発作を起こした患者やパーキンソン病の患者のわずかな動作を測定しているという。(c)AFP