【11月28日 AFP】イタリアで11月1日に英国人交換留学生Meredith Kercherさん(21)が刺殺された事件は、テクノロジーとは無縁の古典的事件の典型と思われていたが、捜査が進むにつれ、携帯電話からさまざまなインターネット機能までハイテク技術によってもたらされる手掛かりに捜査陣が圧倒される事件となりつつある。

 捜査チームはこれまで、携帯メールとインターネット電話の追跡から、性的暴行と麻薬にまつわるこの不可解な事件の容疑者に迫ってきた。

■携帯メールからルームメイトらが容疑者に

 捜査の初期段階で得られた手掛かりは、Kercherさんの米国人ルームメイトAmanda Knox容疑者(20)が、30代後半のコンゴ人バー経営者Patrick Lumumba Diyaさんに事件当夜、「また後で」と送ったメールだった。

 容疑を掛けられたDiyaさんは、事件当時は自身が経営するパブで働いており、メールの内容は単なるあいさつ以上のものではないと供述した。また同夜にDiyaさんの携帯の電波が現場付近から発信されていたと報じられていたが、20日にドイツで新たな容疑者が逮捕され、Diyaさんは数時間後に釈放された。

 法医学捜査班は司法解剖されたKercherさんの胃の内容物に関する解釈について未決着で、Kercherさんの死亡時刻を特定できずにいる。

 ネット上での書き込みや投稿ビデオも、同事件に対するメディアや世論の認識に大きく影響している。

■投稿ビデオから新容疑者逮捕へ

 捜査チームは、20日に新たに逮捕されたコートジボワール人移民のRudy Hermann Guede容疑者(20)が、インターネット上の動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿したビデオを無視できない状態だ。自身が投稿したビデオで同容疑者は、残忍な表情を浮かべ、しわがれた声で「わたしは吸血鬼だ。お前の血を吸ってやる」と語っている。

 また、被害者のルームメイト、Knox容疑者も自分が酔った様子が映ったユーチューブへの投稿ビデオを後悔しているに違いない。同容疑者は会員制サイト「マイスペース(MySpace)」でも、「Foxy Knoxy」と題した自身のページでマシンガンを抱えて笑っている写真を公開していた。事件後、同ページは削除されている。

 捜査を担当する治安判事は、Knox容疑者とそのイタリア人の交際相手Raffaele Sollecito容疑者(24)が、大麻を摂取した状態で「性的欲求に駆られた」殺人を犯したとみているとの報道もある。 

 拘留中のSollecito容疑者もインターネット上に、防護服を着た姿で肉切り包丁を振り回し、ピンクの液体が入った容器を持っている写真を投稿していた。Knox容疑者は婦女暴行に関する短い物語を投稿していたという。

■インターネット電話「スカイプ」でも捜索

 一方、ドイツでのGuede容疑者の逮捕は、インターネット電話「スカイプ(Skype)」が手掛かりとなった。事件発生地イタリアのペルージャ(Perugia)警察はインターネット上を捜索し、Guede容疑者の友人数人を特定、うち一人に任意同行を求めた。この男性は、警察からスカイプを使って同容疑者と会話し、Guede容疑者がデュッセルドルフ(Dusseldorf)にいると伝えたところで、ドイツ警察が逮捕に至った。

 今回、捜査の関心を引いた携帯メールが、実はまったくの作り話だと発覚した場合もあった。

 殺人事件のニュースを聞いたローマ(Roma)の目撃者が、携帯メールサービスの一つSMSで「わたしのために、今晩か明日、Meredithが死ぬ」というショートメッセージを受け取ったと、ペルージャ警察に通報した。メールの送信日は事件の前日でハロウィーンの前日でもあった10月31日だったが、同日はイタリアの医療ドラマ『Grey's Anatomy』の放送日で、主人公Meredith Grey医師がフェリー事故に巻き込まれて死にかけるという内容が放送される回だった。

 Kercherさん殺害事件の容疑者の中に、このメールと関連している人物はいなかった。(c)AFP/Gina Doggett