【6月26日 AFP】メディアが厳しく統制されている中国では、ネットに情報を寄せる「市民ジャーナリズム」が社会の不満へのはけ口ともなり、検閲をかいくぐって台頭しつつある。

■れんが工場での強制労働もネット掲載された告発文書から発覚

 今月、2つの省で「子どもを強制労働させている」というスキャンダルが発覚したが、それを暴露し、広めたのがインターネットだ。発端となったのは、れんが工場での労働を強いられている子どもの親400人がネットに掲載した1枚の告発文書だった。これを全国紙がとりあげ、州政府もこの強制労働に関与していたという事実が明るみになった。

 政府が管理するマスコミに物申すことができない人々がネット上で告発するいわゆる市民ジャーナリズムは「数年前に突然登場した」というのが、1989年の天安門事件の際に学生デモを主導した北京在住の劉暁波(Liu Xiaobo)氏の意見だ。
「特にブログが登場して以来、ブログは情報の発信源になっている」

 劉氏は、重慶(Chongqing)の大規模開発地で3年にわたり立ち退きを拒んだ呉さん一家を例に挙げた。このニュースを最初に取り上げたのはブログだったという。以後、ネットへの書き込みを通じて、呉さん一家は有名になり、どん欲な開発業者や腐敗した自治体への抵抗のシンボルにもなった。

 また、重慶で今月、花屋が警察から殴打されるという事件があったが、この事件を暴いたのもネットだ。地元テレビ局は、目撃者から報告を受けたものの、事件を報道しなかった。市民からは「ファシズムだ」と怒りの声が上がっている。

 河南(Henan)省鄭州(Zhengzhou)でも同様の事件があり、暴動にまで発展。携帯電話で撮影された暴動の様子は動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿され、世界中で閲覧された。

■中国政府はネットの取り締まりを開始

 事実を隠蔽しようとする国営メディアや政府当局に対抗してネットに写真や動画を掲載しようというこうした動きに対し、胡錦濤(Hu Jintao)国家主席は1月、不快感を表明。これを機に、政府はネットの取り締まりを開始した。

 これについて、上海同済大学(Tongji University)のZhu Dake教授は、「すべての市民には、ネット上で批判する権利がある。政府はそうした権利を認めなければならない。昔のように力づくで弾圧することはできないのだ」と語った。

 報道の自由を訴える国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団(Reporters Without Borders)」のメンバーでネットの自由を監視するJulien Pain氏は、市民ジャーナリズムの将来にやや悲観的だ。「市民ジャーナリズムの興隆につれて中国政府は検閲を強めている。中国のインターネットは自由だとは言い難い」

 中国政府を「インターネットの敵」と見なす同団体によると、ネット上で活動している反体制活動家のうち、現在投獄されているのは50人にものぼるという。(c)AFP/Francois Bougon