【シドニー/オーストラリア 17日 AFP】4月に全米を震撼させたバージニア工科大学(Virginia Tech University)の銃乱射事件をベースにしたオンラインのコンピューターゲームがこのほど登場し、これを開発したオーストラリア人男性への抗議の嵐が吹き荒れている。

 ゲームは、32人を射殺したあと自殺した韓国人学生チョ・スンヒ(Cho Seung-Hui)容疑者に見立てた主人公を操作して、別のキャラクターを次々に銃殺していくもの。バージニア工科大学のキャンパスそっくりの背景画像のもと、キャラクターが銃撃されるたびに「叫び声」が流れる。殺人レベルは3段階に分かれている。

 「V-Tech Rampage」と題されたこのゲームを開発したのは、オーストラリアに住む無職のRyan Lambournさん(21)。Lambournさん自身のウェブサイトと、アマチュアが作成したゲームを共有するサイト「Newgrounds.com」に掲載されており、無料でダウンロードできる。国内では、このゲームの即刻削除を求める声が高まっている。

■制作の動機は「おもしろいと思ったから」

 Lambournさんは、17日付「シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)」紙の取材に対し、「おもしろいと思ったから」と制作の動機を語った。削除要求については、「掲載1サイトにつき1000ドル(約12万円)を支払ってもらえるなら削除してもいい。さらに1000ドルくれたら、謝罪してもいい」と答えた。

 しかしこのあと、「(その発言は)みんなをもっと怒らせるためのジョークだった」として、ゲームは削除しないと断言した。Lambournさんは、この種のゲームをこれまでにも制作してきたが、これほど有名になった事例はないという。

 バージニア工科大学の銃乱射事件について、Lambournさんは、犠牲者の遺族や友人に対しては、もちろん、チョ・スンヒ容疑者への同情も禁じ得ないという。彼自身、容疑者同様、高校時代にいじめにあったという。

「何か大変なことをしでかさない限り、誰も耳を傾けてはくれない。そういう世の中だからこそ、彼に同情する。彼は、ああせざるを得なかったのだ」

 Lambournさんは、AAP通信に対し、たとえ遺族から要請があったとしてもゲームは絶対に削除しないと、改めて決意を表明した。

「絶対に削除しない。遺族もそんなことは要請しないだろう」

 写真は4月18日、NBCのウェブサイトに掲載された、バージニア工科大学の銃乱射事件の容疑者が送りつけてきた本人の写真。(c)AFP/MSNBC