【9月21日 AFP】オーストラリア沖のサンゴ礁の健全性維持に重要な役割を担っているサメの乱獲により、サンゴ礁が地球温暖化や災害の影響を受けやすくなるとの調査結果が19日、米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)で発表された。

 オーストラリア海洋科学研究所(Australian Institute of Marine SciencesAIMS)のマーク・ミーカン(Mark Meekan)氏率いる研究チームは、豪州北西部の沖合300キロにあるローリーショールズ(Rowley Shoals)とスコットリーフ(Scott Reefs)でのサメの影響を10年間にわたって調査した。

 ミーカン氏は「サメの個体数が減少している場所では、サンゴ礁での食物連鎖の構造に根本的な変化が生じている」と指摘する。「フエダイなどの中位の捕食魚の数が増加し、ブダイなどの草食魚の数が減少する」

「ブダイは藻を食べるので、非常に重要だ。藻を食べるブダイがいなくなると、若いサンゴが藻に圧倒されて、自然かく乱(台風や山火事などで生態系が乱れること。自然かく乱でできた空間はさまざまな生物の住み場所になり環境再生の場にもなる)が起きるとサンゴ礁が回復できなくなる」

 サンゴが死ぬとその表面を覆うように藻が生え、サンゴの再生能力を阻害する。草食魚が藻をかじり取って小さな隙間を作ることで、サンゴの再生が行われるようになるとミーカン氏は説明する。

■サメ個体数減少は「重大な懸念事項」

 研究チームは、サイクロンと白化現象の影響を、ローリーショールズと隣接するスコットリーフとで比較した。ローリーショールズは海洋保護区で漁業は禁止されている一方、スコットリーフでは主に西ティモールから来るインドネシア人漁師が許可を受けてサメを捕獲している。

 調査の結果、大きな自然かく乱が発生した後に、漁獲が行われているサンゴ礁ではサンゴが減り藻が増えていることがわかった。地球温暖化による圧力が増大するにつれて、こうした傾向が顕著になっているとミーカン氏は指摘する。

 ミーカン氏は「すでに温暖化による変化が出ている状況なので近い将来にサンゴ礁でかく乱が発生する頻度が増加する事態を回避するためにわれわれができることはほとんどないかもしれない」と言う。「だが、サンゴ礁のサメの減少に関してはこれは当てはまらない」

 ミーカン氏によると、今回の研究でサンゴ礁におけるサメ個体数の減少は「重大な懸念事項」であることが示されたという。世界のサンゴ礁で乱獲のためにサメが減ることによって、サンゴの構造が海水の温度と酸性度の上昇による白化現象や大型サイクロンの影響を受けやすくなる恐れがあるからだ。

 サンゴ礁の海域に小規模なサメ禁漁区を設けるだけでも、サメに貴重な餌場を提供して生態系の繊細なバランスを保ち、藻を食べる種類の魚が繁殖できるようになる可能性があるという。

 サンゴ礁の減少率は急激に加速しており1998年以降サンゴ礁で覆われた面積の3分の2が失われている。サンゴ礁が自力で回復するには10~20年かかるが、かく乱が発生する時間間隔は通常それより短いためサンゴ礁が回復できない。(c)AFP