【7月11日 AFP】建設現場から響くたたきつける音、道路からの絶え間ないごう音──騒音の不協和音が鳴り響く香港(Hong Kong)で、専門家と住民は、公衆衛生を維持するために当局に騒音対策を求めている。

 住宅不足の過密都市、香港では、建設会社が一等地を確保する度に古い建物が取り壊され新しい建物が建設されるということが頻繁に起きている。一方、道路ではバスと路面電車と自動車が道を争い、耳をつんざくクラクションを絶え間なく鳴らしている。

 香港は、住宅が世界で最も高価な場所の1つ。過去30年間の急速な成長によって、都市の郊外でも、混雑する幹線道路脇は住居が密接している。香港の主要な問題は大気汚染だが、騒音もまた、人々の生活に影響を及ぼしている。

 香港当局は道路の再舗装や、建設作業の可能な時間帯の制限、より静音性の高い重機の使用や防音効果の高い住宅の建設などの奨励を行っている。だが、今もなお多くの住民が騒音に苦しんでいる。

 IT業界で働く28歳の男性は、自宅そばで行われている建設作業について「拷問の一種」と語る。「建物が揺れる。ソファに座っていても体で揺れを感じる」。だが、この男性が最も嫌なのは、住宅の外で、運転手が鳴らし続けるクラクションだという。

■騒音に悩まされている人は約4割、メンタルヘルスに悪影響も

 香港政府は2011年、騒音の影響を初めて「主題性住戸統計調査(Thematic Household Survey Report)で取り上げた。自宅で騒音に悩まされている人は全体の36%に上り、「かなり、または常に悩まされている」と回答した人は7%に上っていた。

 メンタルヘルスに対する悪影響もあると、香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)精神医学部のアーサー・マク(Arthur Mak)助教は指摘する。「不安障害やうつ病のある人にとって、騒音は症状を悪化させる要因になりうる」

 公営住宅の住民から移転を推奨する診断書の作成を求められることもあるという。「騒音が症状に悪影響をおよぼしている場合には、これまでに何度も作成した。診断書を求める人は必死だ」とマク氏は語った。

 2012年に香港警察に届け出された苦情件数は4万5000件以上。一方、環境保護署(Environmental Protection DepartmentEPD)への苦情は年間5000件ほど。EPDによると、香港当局の設定した70デシベルの制限──世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の推奨制限値と同じ──を超える騒音にさらされている住民は100万人以上に上っている。

 EDPの楊國良(Maurice Yeung)首席環境保護主任によると、建物の基礎を作るのに必要な杭打ち機のような重機は騒音を出すものの、代替を探すのが困難だという。

 楊主任は「住宅不足に直面しているので、住宅を建設できる場所を探している」と述べ、香港当局は過去30年間の香港の急速な発展によってもたらされた問題──香港の人口は1990年の570万人から現在は700万人以上に増加している──に取り組んでいると付け加えた。(c)AFP/Laura Mannering